レストハウス (広島市)

広島平和記念公園レストハウス：被爆の歴史を刻む建物

広島平和記念公園レストハウスは、広島市平和記念公園内に位置する、観光案内所と休憩所を兼ね備えた歴史的建造物です。元安橋西詰めにあり、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館に隣接しています。現在、広島市が所有し、株式会社たびまちゲート広島が指定管理者として運営しています。

建物の歴史：大正屋呉服店からレストハウスへ

この建物は、1929年、建築家・増田清の設計により、大阪に本店を置く「大正屋呉服店」の新館として建てられました。RC造3階建てのモダンな建物は、当時木造家屋が主流だった中島本町にあって、異彩を放っていました。1階はショーウィンドウを備えた店舗、2・3階も店舗として利用され、最上階からは市内を一望できたと言われています。太平洋戦争勃発後の経済統制により1943年末に閉店、その後、広島県燃料配給統制組合が買い取り、「燃料会館」として使用されました。

被爆と奇跡の生還

1945年8月6日、原爆投下。爆心地から約170メートルという至近距離にあった燃料会館は、屋根が崩れ落ち、梁や床が破損し、内部は全焼しました。しかし、頑丈なRC造のため全壊は免れました。当時建物内には37名の組合員がいましたが、29名が即死、残りの8名も多くの犠牲者が出ました。地下室にいた野村英三さん(当時47歳)だけが奇跡的に軽傷で生き残りました。この出来事が、建物の歴史に深く刻まれています。

戦後から現在：保存と改修の歩み

戦後も燃料会館として使用された後、1957年に広島市が買収し「東部復興事務所」に、1982年には市観光協会の事務所となり「レストハウス」と改称されました。長年、保存と改築の議論が続けられましたが、2014年、被爆70周年事業の一環として改修事業が決定。耐震補強と、大正屋呉服店時代の外観への復元、観光資源としての活用が目指されました。2018年1月に一時閉館し、2020年7月にリニューアルオープンしました。

リニューアル後のレストハウス

リニューアルされたレストハウスは、地下1階から地上3階まで全て一般公開されています。地下室は被爆当時の状態をそのまま保存。1階は観光案内所と売店、2階は休憩所、3階は旧中島地区に関する展示室となっています。野村英三さんや、被爆ピアノ「明子さんのピアノ」などの展示もみられます。外観は「大正屋呉服店」当時の薄いオレンジ色のタイルと平屋根に復元され、観光客に広島の歴史と平和のメッセージを伝えています。

アクセス

広島平和記念公園へのアクセス方法については、広島平和記念公園の交通案内をご参照ください。

参考文献

広島市原爆体験記刊行会（編） 『原爆体験記』（朝日選書） 朝日新聞社、1975年
志水清 『原爆爆心地』 日本放送出版協会、1969年
被爆建造物調査委員会（編） 『被爆50周年 ヒロシマの被爆建造物は語る - 未来への記憶』 広島平和記念資料館、1996年
朝日新聞広島支局(編) 『原爆ドーム』 朝日文庫、1998年
山下和也・井手三千男・叶真幹 『ヒロシマをさがそう：原爆を見た建物』 西田書店、2006年
李明・石丸紀興 『近代日本の建築活動の地域性；広島の近代建築とその設計者たち』 溪水社、2008年

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