レスナーヤの戦い

レスナーヤの戦い：大北方戦争における転換点

レスナーヤの戦い（1708年10月9日）は、大北方戦争における重要な戦闘の一つであり、ロシア軍がスウェーデン軍に初めて勝利した戦いとして知られています。この戦いは、その後の戦局を大きく左右する転換点となりました。

戦いの背景

1700年から始まった大北方戦争において、スウェーデンのカール12世は、デンマーク、ロシア、ポーランドといった反スウェーデン同盟国を次々と打ち破り、その軍事的天才ぶりを示していました。しかし、ロシアのピョートル1世は、この間に軍事改革を断行し、国力の増強を図っていました。

1707年、スウェーデン軍はロシアへの侵攻を開始。ホロウチンの戦いでは勝利を収めたものの、ロシア軍の抵抗により進軍は遅れ、補給も困難になっていきました。そこでカール12世は、モスクワへの進撃を断念し、補給を求めてウクライナへ南下することを決意します。

戦闘の経過

カール12世は、ウクライナにおいて、コサックのヘーチマンであるイヴァン・マゼーパの支援と、リガから到着する増援部隊を期待していました。しかし、これらの期待は裏切られることになります。1708年9月28日、レスナーヤ近郊において、レーヴェンハウプト将軍率いるスウェーデン軍の増援部隊が、ロシア軍の遊撃隊に遭遇し、壊滅的な打撃を受けたのです。

この戦いで、スウェーデン軍は9,000人以上の兵士を失い、3ヶ月分の備蓄、火砲、弾薬といった莫大な量の輜重を奪われました。この損失は、スウェーデン軍の士気を大きく低下させました。

戦いの影響

レスナーヤの戦いの敗北は、その後の戦局に大きな影響を与えました。スウェーデン軍は、補給不足に苦しみ、ウクライナでの食糧徴発も住民の抵抗にあい、兵士の消耗は激しくなっていきました。また、マゼーパの支援も期待外れに終わり、スウェーデン軍は孤立を深めていきました。

1709年、スウェーデン軍はポルタヴァの戦いでロシア軍に大敗を喫し、大北方戦争の帰趨は決定的となりました。ピョートル1世は、レスナーヤの戦いを「ポルタヴァの戦いの母」と呼び、その勝利の重要性を強調しました。

まとめ

レスナーヤの戦いは、大北方戦争におけるターニングポイントであり、ロシア軍がスウェーデン軍に勝利した最初の重要な戦いでした。この戦いの勝利によって、ロシア軍は自信を深め、その後のポルタヴァの戦いでの勝利へと繋げていったのです。レスナーヤの戦いは、単なる局地的な戦闘ではなく、その後のヨーロッパの勢力図を塗り替えるきっかけとなった重要な出来事でした。

参考文献

阿部重雄「ピョートル大帝と北方戦争」（大類伸監修、林健太郎・堀米庸三編『世界の戦史 第六巻』に収録）人物往来社、1966年。
土肥恒之『ピョートル大帝とその時代 サンクト・ペテルブルグ誕生』中公新書、1992年。
* 阿部重雄『タチーシチェフ研究 18世紀ロシア一官僚＝知識人の生涯と業績』刀水書房、1996年。

もう一度検索