レダと白鳥 (ティントレット)

ティントレット作『レダと白鳥』

作品概要

『レダと白鳥』（伊:Leda e il cigno）は、イタリア・ルネサンス期を代表するヴェネツィア派の巨匠、ティントレットによって1550年から1560年頃に制作された油彩画です。カンヴァスに描かれたこの作品は、ギリシャ神話に登場するスパルタの王妃レダと、白鳥に姿を変えた大神ゼウスの物語を題材としています。現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されており、ティントレットの代表作の一つとして高く評価されています。

制作年代と真筆性

作品の制作年代については美術史家の間で意見が分かれていますが、多くの場合、1550年代に制作されたと考えられています。これは、同時期の作品である『ウルカヌスに驚かされるヴィーナスとマルス』や『ヨセフとポティファルの妻』との比較からも裏付けられています。かつては同時期とされていた『ユーディットとホロフェルネス』は、現在では工房の作品とされています。

真筆性については、過去に疑問視されたこともありましたが、1988年と1994年の修復作業によって、ティントレットの真筆であることが確認されました。この修復によって、作品の保存状態も改善され、より鑑賞に適した状態になっています。

作品の変遷

この作品は、18世紀後半にはパリのオルレアン・コレクションに所蔵されていました。その後、ロンドンでブリッジ・ウォーター公爵の手に渡り、1857年にはポール・ノートンによって購入されました。最終的には1895年、アルトゥーロ・デ・ノエ・ウォーカーの寄贈によって、現在の所蔵先であるフィレンツェのウフィツィ美術館に収蔵されることとなりました。

別バージョンの存在

ウフィツィ美術館は、この作品とは別に、アレッサンドロ・コンティーニ・ボナコッシ・コレクションに由来する別のバージョンも所蔵しています。このバージョンは、本作の原型となった作品であると考えられており、構図や表現に若干の違いが見られます。特に、左側の召使の部分が後から切断されており、現在は正方形に近い画面構成になっている点が特徴的です。

作品の特徴

『レダと白鳥』は、ティントレット特有のドラマチックな構図と、人物の躍動感あふれる表現が特徴です。レダの官能的な姿態と、白鳥の優雅な動きが対照的に描かれており、見る者に強い印象を与えます。また、色彩の豊かさと、光と影のコントラストによって、神話的な雰囲気が強調されています。

まとめ

ティントレットの『レダと白鳥』は、その高い芸術性と歴史的な価値から、ルネサンス美術を代表する作品として広く知られています。神話の場面を劇的に表現したこの作品は、多くの人々を魅了し続けています。ウフィツィ美術館を訪れる際には、ぜひこの名作を鑑賞してください。

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