レット・ザ・グッド・タイムス・ロール〜ザ・ミュージック・オブ・ルイ・ジョーダン

ブルース界の巨匠B.B.キングが、1999年に発表したアルバム『レット・ザ・グッド・タイムス・ロール〜ザ・ミュージック・オブ・ルイ・ジョーダン』は、スウィングやリズム・アンド・ブルース（R&B）の歴史に名を刻むルイ・ジョーダンへの深い敬意を表したトリビュート作品です。

キング自身、ルイ・ジョーダンを高く評価しており、特に彼がビッグバンド時代からR&Bを成功させたパイオニアであること、そして「史上初のラッパー」とも呼べるような独特なボーカルスタイルで人々を魅了した点を挙げています。ジョーダンの音楽が持つユーモアと、聴く者を踊らせずにはいられない魅力は、B.B.キングにとって特別な存在だったようです。

このアルバムには、ニューオーリンズを代表するピアニスト、ドクター・ジョンがゲスト参加し、彼の持ち味であるピアノ演奏に加え、「イズ・ユー・イズ、オア・イズ・ユー・エイント（・マイ・ベイビー）?」ではB.B.キングとのデュエットボーカルも披露しています。また、ホーンセクションには、長年にわたりレイ・チャールズのバンドで活躍した経験を持つハンク・クロフォード、デヴィッド・"ファットヘッド"・ニューマン、マーカス・ベルグレイヴといった実力派ミュージシャンが参加し、サウンドに厚みを加えています。

本作は、アメリカの総合アルバムチャートであるBillboard 200にはランクインしなかったものの、『ビルボード』のブルース・アルバム・チャートでは2位を獲得し、同ジャンルでの根強い人気を示しました。国外では、ニュージーランドのアルバムチャートで最高29位を記録するなど、一定の商業的成功を収めています。

評論家筋の評価も概ね好意的で、オールミュージックのStephen Thomas Erlewineは、B.B.キングがルイ・ジョーダンの持つワイルドさとは異なるアプローチを取りつつも、ジョーダンへの深い恩義が作品全体から感じられると評しました。特に興味深い点として、このアルバムではB.B.キングのトレードマークであるギター演奏が比較的控えめであり、彼のボーカルとバンドメンバーとのアンサンブルに焦点が当てられていることが指摘されています。もちろん、要所で披露されるギターソロは、キングならではの滑らかで味わい深いプレイですが、全体の中心はあくまでボーカルパフォーマンスにあると分析されています。

収録曲の中でも、「イズ・ユー・イズ、オア・イズ・ユー・エイント（・マイ・ベイビー）?」は、翌年の第43回グラミー賞において、ドクター・ジョンとの連名で「最優秀ポップ・コラボレーション賞」を受賞するという栄誉に輝きました。

本作には全18曲が収録されており、ルイ・ジョーダンが作曲に関わった楽曲を中心に、彼のレパートリーを幅広くカバーしています。参加ミュージシャンは以下の通りです。

B.B.キング - ボーカル、ギター
ドクター・ジョン - ボーカル(on #2)、ピアノ
ニール・ラーセン - [ピアノ]、ハモンドオルガン
ラッセル・マローン - リズムギター
ジョン・ハード - ベース
アール・パーマー - ドラムス
レニー・カストロ - パーカッション
ハンク・クロフォード - アルト・サクソフォーン、ホーン・アレンジ
デヴィッド・"ファットヘッド"・ニューマン - テナー・サクソフォーン
マーカス・ベルグレイヴ - トランペット

これらのベテランミュージシャンたちの円熟した演奏が、ルイ・ジョーダンの楽曲に新たな息吹を与え、B.B.キングのトリビュート作品として見事に昇華させています。

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