レッド (テイラーズ・ヴァージョン)

『レッド (テイラーズ・ヴァージョン)』

『レッド (テイラーズ・ヴァージョン)』は、アメリカのシンガー・ソングライターであるテイラー・スウィフトによって制作された2枚目の再録音スタジオ・アルバムです。2021年11月12日にリパブリック・レコードから世界に向けてリリースされました。この作品は、2012年に発表された彼女の4作目のスタジオ・アルバム『Red』を再録したバージョンであり、原盤権の問題を巡る自身の楽曲を取り戻すために開始された大規模な再録プロジェクトの第2弾として位置づけられています。

アルバムの背景と制作

本作のリリースは、2021年4月に先行して発表された『Fearless (Taylor's Version)』に続くものです。この再録プロジェクトは、2019年8月に発生した、テイラーがかつて在籍したレコードレーベル、ビッグマシンレコードの原盤権がタレントプロデューサーのスクーター・ブラウンに買収された騒動を受けて始まりました。テイラーは自身の初期作品6枚の原盤権を取り戻すため、これらのアルバムを新たに録音し直すことを決定しました。

収録曲構成

『レッド (テイラーズ・ヴァージョン)』には、オリジナル版『Red』のデラックス盤に含まれていたデモを除く全20曲に加え、同時期にリリースされたチャリティー・シングル「Ronan」、他のアーティストへ提供した楽曲「Better Man」「Babe」、そして当時のセッションから生まれた未発表曲6曲、さらにはオリジナル版でファンから絶大な支持を得ていた「All Too Well」の完全版となる10分バージョンが収録されています。これらの追加曲を含め、合計30曲というボリュームになりました。

収録曲は全て新たに録音されており、それぞれの曲名には「(Taylor's Version)」という副題が付加されています。特に、22曲目から30曲目までの未発表曲は、さらに「(From the Vault)」という特別な表記が加わり、ファンにとっては待ち望まれた楽曲群となりました。プロデューサー陣は、オリジナル版に携わったシェルバックやダン・ウィルソン、ジェフ・バスカーらが再び参加し、音質を向上させつつ、楽曲本来のサウンドを忠実に再現しようと試みています。ただし、オリジナル版に参加していたマックス・マーティンは本作には関わっていません。また、オリジナル版とは異なり、19曲目の「Girl at Home」はエルヴィラによるエレクトロニックポップ調に大幅にアレンジが変更されています。

ゲストボーカル

アルバムには、オリジナル版でフィーチャーされていたゲストボーカル、ギャリー・ライトボディ（スノウ・パトロール）とエド・シーランの歌唱パートも新たに再録されました。さらに、本作からフィービー・ブリジャーズとクリス・ステイプルトンの2名が新たにゲストとして参加し、楽曲に彩りを加えています。

商業的な成功

『レッド (テイラーズ・ヴァージョン)』はリリース直後から驚異的な成功を収めました。配信開始初日には、世界中のSpotifyで9,080万回以上のストリーミング再生を記録し、女性アーティストによる1日当たりのストリーミング回数として新記録を樹立しました（以前の記録はテイラー自身のアルバム『folklore』の8,060万回再生でした）。全世界での初週売上は120万枚を超える大ヒットとなりました。

特にアメリカ合衆国では、わずか5日間で50万ユニット以上を売り上げ、最終的に初週で60.5万ユニット以上を記録しました。これにより、権威ある米国音楽チャート、Billboard 200で初登場首位を獲得。テイラー・スウィフトにとって10作連続での首位獲得となり、女性アーティストとしては史上2番目に多い首位獲得記録を更新しました。また、10作連続という記録は、女性アーティストとしては史上初となる快挙です。

アルバム収録曲の多くもシングルチャートにランクインし、全30曲中26曲がBillboard Hot 100にチャートインしました。中でも「All Too Well (Taylor's Version)」は初登場で1位を獲得し、テイラー・スウィフトはアルバムとシングルの両方が同時初登場首位となる記録を3回に伸ばしました（過去には『folklore』と「cardigan」、『evermore』と「willow」で達成）。さらに、「All Too Well (Taylor's Version)」は、5分版と10分版の合算集計により、ビルボード史上最も演奏時間の長い全米No.1ソングとして記録されることになりました。

アメリカ以外でも、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなど、主要な音楽市場でアルバムチャートの首位を獲得するなど、世界規模での商業的成功を収めました。

プロモーション

本作のプロモーション活動として、未発表曲の一つである「I Bet You Think About Me」のミュージックビデオや、「All Too Well」の10分バージョンに基づいた短編映画が制作され、YouTubeなどのプラットフォームで公開されました。これらの映像作品も話題を集め、アルバムへの注目度を高めました。

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