レッドブル・RB5

レッドブルRB5：2009年シーズンの革新的マシン

2009年のF1世界選手権でレッドブル・レーシングが投入したレッドブルRB5は、エイドリアン・ニューウェイとジェフ・ウィリスによる設計で、シーズンを通して使用されました。このマシンは、大幅なレギュレーション変更に対応するため、前年のRB4から大きく進化を遂げました。

レギュレーション変更への対応

2009年は、オーバーテイク増加を目指し、スリックタイヤ復活、空力デバイスの制限、そしてKERS（運動エネルギー回収システム）導入など、技術レギュレーションが大幅に変更されました。RB5はこれらの変更を踏まえ、空力特性の最適化、軽量化、そしてKERS対応という三つの大きな課題に取り組みました。

独創的なデザインと空力性能

RB5の最も特徴的なデザインとして挙げられるのが、「Vノーズ」です。ノーズ上面中央がえぐられた形状は、ノーズ下部の整流をスムーズにするための工夫であり、断面積規定への対応策でもありました。

フロントウイングは、3枚タイプのアッパーエレメントを追加した複雑な構造で、ダウンフォースと整流効果を高めています。また、サイドミラーはポンツーン前端に配置され、コンパクトなリヤエンドと相まって、優れた空力性能を実現しました。

リヤウイングは、翼端板とディフューザー側壁を一体化するという独特のデザインが採用されました。さらに、シーズン途中にはダブルデッカーディフューザーやディフューザー拡大といったアップデートを実施し、空力性能の向上を追求しました。

サスペンションと低重心化

RB5はフロントにゼロキール式、リアにプルロッド式サスペンションを採用。リアはダンパーやスプリングを低位置に配置することで低重心化を実現し、空力効率の向上に貢献しました。このプルロッド式サスペンションは、2009年シーズンにおいて独自の技術として注目を集めました。

KERSと信頼性

当初は独自開発を目指したKERSでしたが、トラブル発生によりルノー製KERSへの変更を余儀なくされました。しかし、レースではKERSは使用されませんでした。プレシーズンテストでは信頼性への不安もありましたが、シーズンを通して、マシン性能を最大限に引き出すことに成功しました。

シーズン成績と影響

開幕戦からブラウンGPに次ぐ速さを発揮し、第3戦中国GPでは1-2フィニッシュでチーム初勝利を飾りました。後半戦はKERS搭載マシンの台頭やエンジントラブルに悩まされましたが、終盤に3連勝を達成し、コンストラクターズランキング2位を獲得しました。

RB5は、Vノーズやリアプルロッドサスペンションなど、多くの革新的な技術を搭載しており、その後のF1マシン設計に大きな影響を与えました。エイドリアン・ニューウェイはRB5を「すべてのマシンの父」と評し、その高い評価を示しました。

スペック

以下にRB5の主要スペックを示します。

シャーシ:
シャーシ名: RB5
シャーシ構造: カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造モノコック
サスペンション: フロント-カーボンファイバー製ダブルウィッシュボーン、プッシュロッド式、リア-プルロッド式
タイヤ: ブリヂストン
ギアボックス: 縦置き7速＋リバース1速油圧式セミオートマチック
KERS: ルノーF1・マニエッティ・マレリ共同開発（レース未使用）
重量: 605kg (冷却水、潤滑油、ドライバーを含む)

エンジン:
エンジン名: ルノーRS27
気筒数・角度: V型8気筒・90度
排気量: 2,400cc
最高回転数: 18,000rpm
重量: 95kg

RB5は、革新的なデザインと技術によって、2009年シーズンのF1を席巻した名車と言えるでしょう。その功績は、後続のマシンにも受け継がれ、F1の歴史に大きな足跡を残しました。

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