レッド・クラウド

レッド・クラウドとは

レッド・クラウド（Red Cloud, [[ラコタ語]]：Makhpiya Luta）は、19世紀の北米インディアン、オグララ・スー族の部族員です。彼の[[ラコタ語]]名「マアピヤ・ルタ」は、「赤い空」を意味し、彼が生まれた時に空が赤く染まっていたことに由来します。白人によって「レッド・クラウド（赤い雲）」と誤訳されました。彼は、スー族のなかでもオグララ族のイテシカ族という名門の出身です。

誤解された指導者

レッド・クラウドは、白人によって「スー族の大指導者」として祭り上げられましたが、実際には、スー族には部族全体を統括するような指導者の概念は存在しませんでした。当時のスー族は、各支族の長老たちが集まって合議によって物事を決定していました。レッド・クラウドは、その合議組織のメンバーではなく、単なる部族員に過ぎませんでした。しかし、彼の卓越した交渉術と如才なさが白人たちの目に留まり、重要な条約の署名者として和平委員会で重宝されるようになったのです。

ララミー条約とその後

レッド・クラウドは、スー族の土地と権利をめぐる重要な「ララミー条約」に署名しました。和平委員会にとって、条約に署名さえしてもらえれば、彼の部族での立場は重要ではありませんでした。しかし、部族員に過ぎない彼が、部族の代表として合議に関わることは、スー族の掟に反する行為でした。

その後、レッド・クラウドは何度かワシントンに招かれ、ニューヨークのクーパーユニオン大学で演説を行いました。これらの経験から、彼は白人の強大さを痛感し、同じく部族員のスポッテッド・テイルとともに、いずれ白人によってスー族の領土やブラックヒルズが奪われるだろうと考え、それをできるだけ高く売りつけるべきだと考えるようになりました。1874年の和平会談では、金が発見されたブラックヒルズの価値を吊り上げるよう部族に提案しましたが、クレイジー・ホースやシッティング・ブルなどの交戦派は、会談自体を侮辱として出席すら拒否しました。

部族内での立場

レッド・クラウドは、「部族の代表者」として白人との会談に関わったことで、他の部族員や交戦派から軽蔑されました。しかし、白人の要求は部族の存続を危うくさせるほどの軍事力を伴っており、誰かがその役割を担う必要があったのも事実です。

戦歴の誤解

レッド・クラウドは、白人から「レッドクラウド戦争」と呼ばれる紛争に関わったとされますが、実際には、彼はこの戦争に全く参加しておらず、指導者としても重要な役割も果たしていません。「フェッターマンの虐殺」の記念碑に彼の名前が刻まれていますが、当時の戦士たちは彼の参加を否定しています。また、1876年の「リトルビッグホーンの戦い」にも参加していません。

晩年

オグララ族が保留地に閉じ込められると、1877年にレッド・クラウドは自身の名を冠したレッド・クラウド管理所の責任者に任命され、親族を要職につけました。彼は、クレイジー・ホースとは敵対関係にあり、クレイジー・ホースが生涯愛した女性「ブラック・バッファロー・ウーマン」は、レッド・クラウドの姪の一人でした。彼女をノー・ウォーターと結婚させたのは、レッド・クラウドの差し金だという説もあります。

レッド・クラウドの発言

レッド・クラウドは、白人との関係について次のような言葉を残しています。

「白人はいろいろ約束をし、すべて破った。ひとつだけ守ったことがあるが、それは我々の土地を盗むと約束して、その通り盗んだことだ。」

「やがては私も畑を耕さなくてはならないだろうが、それを今すぐやれといわれても、それは無理な話だ」

これらの言葉は、白人に対する不信感と、時代の変化に対する彼の複雑な心境を表しています。

まとめ

レッド・クラウドは、誤解されがちな人物ですが、スー族の歴史において重要な役割を果たした人物であることは間違いありません。彼は、部族の伝統と、白人社会の圧力の間で、複雑な立場に立たされました。彼の生涯は、アメリカ先住民の歴史における悲劇と、それに対する抵抗の象徴として、今も語り継がれています。

参考文献

「クレイジーホース」（ライフ社）
「ブラック・エルクは語る」（めるくまーる社）
「魂の指導者クロウドッグ」（サンマーク出版）

外部リンク

PBS - THE WEST - Red Cloud
* Red Cloud (1822 - 1909) - Find A Grave Memorial

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