レッド・ステイト

『レッド・ステイト』（Red State）は、2011年にアメリカ合衆国で製作されたスリラー映画である。ケヴィン・スミスが監督・脚本を手掛けた本作のタイトルは、共和党支持者が多く保守的とされる「赤い州」を指しており、特定の地域に根差した思想や信仰、そしてそれらが引き起こす狂気や暴力といったテーマを示唆している。日本では「“シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション」の一環として2012年10月27日に公開された。

物語は、田舎町に住む高校生のトラヴィス、ビリー・レイ、ジャロッドの三人組が、出会い系サイトで知り合った女性との会合に向かうことから始まる。しかし、彼女が指定したトレーラーハウスで待ち受けていたのは、性的な目的ではなく、教団メンバーによる拉致であった。三人は強烈な睡眠薬を盛られ、意識を失う。

目を覚ますと、彼らは見知らぬ教会の檻の中に閉じ込められていた。ここは、牧師アビン・クーパーをリーダーとする過激なキリスト教原理主義者集団「ファイヴ・ポインツ教会」のアジトであった。クーパーは、三人を性欲に溺れた罪人であると断じ、処刑を宣告する。極限の状況下で、ビリー・レイが脱出を試みるが、追跡した信者との銃撃戦の末に命を落とす。偶然、その銃声を聞いた保安官補が教会に接近し、応援を要請するが、彼もまた信者の凶弾に倒れる。

事態を知ったワイナン保安官は、かつてクーパーに同性愛の現場写真を撮られ脅迫されていたため、一度は自殺を考える。しかし思い直し、連邦政府に支援を要請する。これにより、ATF（アルコール・タバコ・火器・爆発物取締局）の特殊部隊が教会を取り囲み、事態の解決を図ることとなる。

特殊部隊による包囲網が敷かれ、鎮圧は時間の問題と思われた矢先、事態は予期せぬ方向へ向かう。ビリー・レイの死体と共に死んだふりをしていたトラヴィスが教会からの脱出を図るが、彼を誤射した保安官のパニックが混乱を引き起こす。同時に、教会の地下に隠されていた大量の銃火器を発見した信者たちは、これを手に特殊部隊に対して激しい抵抗を開始する。ATF側も、自らの誤射という失態を隠蔽するため、人質救出という本来の目的を放棄し、教会内の人間をテロリストと見なし無差別に排除する方針を決定する。田舎町での人質事件は、政府機関とカルト集団の壮絶な銃撃戦へと発展する。

教会内では、クーパーの孫娘であるシャイアンが、残された人質ジャロッドに幼い子供たちの救出を仲介してほしいと懇願するが拒絶される。その様子を見たシャイアンの母サラとの揉み合いの中で、シャイアンは誤ってサラを射殺してしまう。その後、シャイアンはジャロッドと共に投降を試みるが、非情な特殊部隊によって二人ともその場で射殺される。

激しい銃撃戦により双方に多数の犠牲者が出る中、突如、現場に異常なラッパ音が鳴り響く。これを神の啓示、すなわち「最後の審判」の始まりだと信じたクーパーとその信者たちは、武器を捨てて特殊部隊の前に姿を現し、持論を叫びながら指揮官キーナンに迫る。

結局、クーパーらは逮捕されるが、「テロリスト」として公の裁判にかけられることはなく、社会から存在を抹消される形で収監される。現場に響いたラッパ音は、教団と敵対していた学生たちによる稚拙な悪戯に過ぎなかったことが後に判明する。

本作は、狂信的な宗教観と政府権力の暴走が招く悲劇を描き、観る者に強い衝撃を与える。特定のモデルとされるウエストボロ・バプティスト教会や、過去に実際に起きたブランチ・ダビディアン事件との類似性も指摘されており、アメリカ社会の抱える闇や極端な思想の危険性を浮き彫りにしている。

キャスト

主要なキャストは以下の通り。

トラヴィス - マイケル・アンガラノ（日本語吹替：三宅貴大）
シャイアン - ケリー・ビシェ（日本語吹替：宗川めぐみ）
ビリー・レイ - ニコラス・ブラウン（日本語吹替：佐々木啓夫）
ジャロッド - カイル・ガルナー（日本語吹替：山崎健太郎）
ジョセフ・キーナン - ジョン・グッドマン（日本語吹替：石田太郎）
サラ - メリッサ・レオ（日本語吹替：渡辺育子）
アビン・クーパー - マイケル・パークス（日本語吹替：佐々木梅治）
ブルックス捜査官 - ケヴィン・ポラック
ワイナン保安官 - スティーヴン・ルート
ハモンド捜査官 - パトリック・フィッシュラー

関連項目

ヘイトクライム
ウエストボロ・バプティスト教会
悪魔の追跡
ブランチ・ダビディアン

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