レッド川方面作戦

レッド川方面作戦：南北戦争における北軍の惨敗

レッド川方面作戦は、南北戦争中の1864年3月10日から5月22日にかけて、ルイジアナ州のレッド川流域で展開された一連の戦闘です。北軍が主導したこの作戦は、南軍のリチャード・テイラー将軍が指揮する部隊と、北軍のナサニエル・バンクス少将が率いる部隊の間で激しい戦いが繰り広げられました。

作戦の背景と目的

当初、この作戦は北軍総司令官ヘンリー・ハレックの発案によるものでした。ユリシーズ・グラント中将が指揮を引き継ぐと、作戦の目的は、バンクス率いるメキシコ湾岸軍を使い、アラバマ州モービルを占領して南軍の主力を包囲するというものに変更されました。さらに、北軍は以下の3つの具体的な目標を設定しました。

1. テイラーが指揮する南軍部隊の撃破
2. ルイジアナ州シュリーブポートの占領と、レッド川より北の地域、およびテキサス州東部の制圧
3. レッド川沿いのプランテーションからの大量の綿花（10万樽以上）の押収

北軍の戦略家たちは、テキサス州をアメリカ連合国の他の地域から切り離し、南軍の重要な物資供給源を断つことを目指しました。また、フランス軍がテキサスで南軍に合流する可能性も考慮されていましたが、これは後に事実無根であることが判明しました。

作戦の経過

ハレックの作戦計画は1864年1月に完成し、バンクスはニューオーリンズから部隊を率いてアレクサンドリアへ進軍し、そこでウィリアム・シャーマン軍から派遣された部隊と合流する予定でした。その後、シュリーブポートに向けてレッド川を遡上し、海軍の砲艦隊の支援を受ける計画でした。同時に、アーカンソー州からはフレデリック・スティール少将の部隊が南下し、シュリーブポート攻撃に参加することになっていました。

しかし、作戦は遅延し、バンクスはシャーマンやポーターに、シュリーブポートやテキサス東部の占領維持が困難であることを報告しました。北軍は綿花投機家を同行させ、ポーターは綿花を回収するための艀を準備していました。

戦闘の開始と北軍の進撃

北軍のフランクリン軍は3月10日に進軍を開始し、A・J・スミス軍はレッド川沿いのデ・ルッシー砦を占領しました。これにより、作戦が開始されました。ポーター提督は川を塞いでいた筏を除去し、北軍はアレクサンドリアに到達しました。しかし、フランクリン軍の到着が遅れたことや、バンクス自身の指揮の遅れから、作戦には混乱が生じ始めました。スミスは、アレクサンドリアから上流にあるテイラーの前哨基地を攻撃し、多くの騎兵と基地を捕獲しました。

グラント将軍からの指令により、A・J・スミス軍が4月半ばまでにシャーマン軍に帰還する必要があることが判明し、シュリーブポートの早期占領が重要になりました。カービー・スミス将軍は、北軍の動きに対応するため軍の配置を決定しきれず、テイラー軍は少ない兵力で戦わざるを得ませんでした。バンクス軍はナチトチェスに到着しましたが、雨による遅延や、ポーター提督の砲艦隊の遅れも作戦の進行を妨げました。

マンスフィールドの戦いと北軍の敗北

4月8日、マンスフィールドで激戦が繰り広げられました。北軍は南軍の巧妙な伏兵に遭い、大損害を被りました。南軍は歩兵と騎兵が連携し、北軍の側面を攻撃し、北軍は混乱に陥りました。この戦いで北軍は約2,900名の損失を出し、南軍は1,500名程度の損失でした。北軍の敗北は、この作戦における転換点となりました。

プレザントヒルの戦いと北軍の撤退

翌4月9日、プレザントヒルで再び戦闘が起こりました。南軍はチャーチル准将の部隊を投入しましたが、北軍のスミスとモーワーの部隊の反撃を受け、撤退を余儀なくされました。プレザントヒルの戦いでは、両軍とも約1,600名の損失を出しました。北軍は戦術的な勝利を収めましたが、作戦全体の目標達成には至りませんでした。

北軍は水や補給の不足から急速な撤退を余儀なくされ、さらに上流での南軍の策略によりレッド川の水位が低下し、補給船の航行も困難になりました。

作戦の終結

カービー・スミスはテイラーの反対を押し切り、2個師団をアーカンソー州へ派遣したため、テイラーの部隊はさらに兵力を減らしました。バンクスはアレクサンドリアへの撤退を命じ、4月23日のモネッツフェリーの戦いでは、北軍が側面攻撃で南軍を退けました。しかし、撤退中にポーターの艦隊が南軍の奇襲を受け、艦艇が失われました。

アレクサンドリアでは、ベイリー大佐が堰を築き、艦艇を通過させようとしましたが、困難を極めました。最終的に北軍はミシシッピ川に到達し、バンクスは作戦の失敗の責任を問われ、指揮権を解かれました。

作戦の結果と影響

レッド川方面作戦は北軍の失敗に終わり、戦争の行方に大きな影響を与えることはありませんでした。この作戦によって、北軍はモービルを占領するという重要な目標から逸れ、結果として戦争が長引いたとされています。

作戦の失敗はバンクスの軍歴を事実上終わらせ、作戦中に押収された綿花をめぐる議論は、彼の後の政歴にも傷をつけました。一方、南軍もムートンやグリーンといった重要な指揮官を失い、兵力の回復が困難になりました。また、テイラーとカービー・スミスの間の亀裂もこの作戦が原因で決定的なものとなりました。テイラーは、北軍の艦隊を捕獲する機会を逃したことを悔やみ続けたと言われています。

レッド川方面作戦は、南北戦争における北軍の戦略的失敗の典型例として歴史に刻まれることとなりました。

もう一度検索