レディース・オブ・ザ・ロード

2002年にリリースされたキング・クリムゾンのライブ・アルバム『レディース・オブ・ザ・ロード』は、1971年5月から翌1972年4月にかけて行われたコンサートにおける演奏を収録した作品です。この時期はバンドの歴史において特にメンバーが流動的で、激動とも言える期間でした。

背景

キング・クリムゾンは1969年のデビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』発表後、北米ツアー中に多くのメンバーがグループを離れるという事態に直面しました。続くセカンド・アルバム『ポセイドンのめざめ』の制作時には、創設メンバーのうちロバート・フリップ（ギター、メロトロン）と作詞・コンセプトを担当するピート・シンフィールドのみが残された状態となります。彼らは旧メンバーやゲスト・ミュージシャンの協力を得てこのアルバムを完成させた後、メル・コリンズ（サクソフォーン、フルート）らを新たなメンバーとして迎え入れ、同年12月にサード・アルバム『リザード』を発表します。

しかし、ライブ活動の再開準備が進められる中で、コリンズ以外の新加入メンバーが脱退してしまいます。そこでバンドは、新たにドラマーのイアン・ウォーレスとシンガーのボズ・バレルを迎えることを決定しました。特筆すべきは、本来ギターを担当していたバレルに対し、フリップとウォーレスが協力してベース・ギターの演奏を指導し、彼がベーシストも兼任することになった点です。こうして、ロバート・フリップ、メル・コリンズ、ボズ・バレル、イアン・ウォーレス、そしてサウンド・エンジニアリングやシンセサイザー、照明を担当するピート・シンフィールドというラインナップで、1969年の北米ツアー以来となるコンサート活動が1971年4月にフランクフルトでの公演から再開されました。

彼らは同年5月から10月末までイギリス国内をツアーし、続いて11月からは約1ヶ月間にわたるアメリカ及びカナダでのツアーを行いました。これらのライブ活動と並行して、バンドは同年7月から新作アルバム『アイランズ』の制作にも取り組んでいます。

しかし、『アイランズ』が発表されて間もない12月、シンフィールドはフリップとの対立からバンドを解雇されます。さらに年が明けたリハーサルにおいて、フリップとコリンズら他の三名との間に決定的な溝が生じ、グループの解散が決定されました。契約上の義務を果たすため、バンドは4人編成（フリップ、コリンズ、バレル、ウォーレス）となり、1972年2月から4月にかけて最後の北米ツアーを行い、これが終了した時点で活動を停止しました。

本作『レディース・オブ・ザ・ロード』には、まさにこの1971年4月から1972年4月にかけての、バンドのメンバーが変遷し、解散に至るまでの過程で行われたライブ演奏が収められているのです。

内容

本作に収められているのは、主に1971年5月から10月末までのイギリス・ツアー、同年11月からの北米ツアー、そしてシンフィールド脱退後の4人編成による1972年2月から4月にかけての北米ツアーからの音源です。アルバム・タイトルは、これらのツアーと並行して制作されたアルバム『アイランズ』に収録された同名曲「Ladies Of The Road」に由来するものと考えられています。この楽曲は当時のライブで頻繁に演奏されたものの、本作には残念ながら収録されていません。

アルバムはVolume OneとVolume Twoの二部構成となっています。

Volume One: LADIES OF THE ROAD

Volume Oneには、ロバート・フリップ主宰の通信販売限定シリーズ『キング・クリムゾン・コレクターズ・クラブ』で過去に発表されたライブ演奏が多く収められています。ドノヴァンが作曲した「Get Thy Bearings」は、1969年のオリジナル・メンバーによる演奏も存在しますが、本作では1971年のメンバー（シンフィールドを除く）による独自の編曲で披露されています。

Volume Two: SCHIZOID MEN

Volume Twoには、特に興味深い音源が収録されています。これは1972年の4人編成による北米ツアーにおける「21st Century Schizoid Man」の演奏から、ギターとサックスのソロ部分のみを11トラック分抜き出し、繋ぎ合わせて構成された「Schizoid Men 1-11」です。これらの音源は当時カセットレコーダーで録音されたものが使用されています。

このアルバムは、キング・クリムゾンというバンドが短期間に劇的な変化を遂げた時期における、ライブにおける生の姿を捉えた貴重な記録と言えるでしょう。当時のメンバーの演奏スタイルや、困難な状況下での創造性が垣間見える作品です。

参加ミュージシャン

ロバート・フリップ (Robert Fripp) – ギター、メロトロン
メル・コリンズ (Mel Collins) – サクソフォーン、フルート、メロトロン
ボズ・バレル (Boz Burrell) – リード・ボーカル、ベース・ギター
イアン・ウォーレス (Ian Wallace) – ドラムス、バック・ボーカル
* ピート・シンフィールド (Pete Sinfield) – FOHサウンド・エンジニアリング、VCS3、照明 (Volume Oneの一部)

収録曲

Volume One: LADIES OF THE ROAD

1. 冷たい街の情景 (Pictures of a City)
2. レターズ (The Letters)
3. フォーメンテラ・レディ (Formentera Lady) (abridged)
4. 船乗りの話 (The Sailor's Tale)
5. サーカス (Cirkus)
6. グルーン (Groon)
7. ゲット・ザイ・ベアリングス (Get Thy Bearings)
8. 21世紀のスキッツォイド・マン (21st Century Schizoid Man)
9. クリムゾン・キングの宮殿 (The Court of the Crimson King)

Volume Two: SCHIZOID MEN

1. 1 - 11 スキッツォイド・メンPT.1 - PT.11 (Schizoid Men Pt.1 - 11)

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