ボズ・バレル
ボズ・バレル（Boz Burrell）は、1946年8月1日にイングランドのリンカンシャー、ホルビーチで、レイモンド・バレルとして生を受けました。彼はロックの世界において、特にベーシストとしてその名を刻んだ人物です。初期にはボーカリストとしても活動していましたが、キング・クリムゾンへの加入を機にベース演奏を習得するという異色のキャリアを歩み、その後は名門バンドでその才能を発揮しました。
バレルの音楽キャリアは、1963年に地元リンカンシャーのバンド「ロンバード・アンド・ティー・タイム・フォー」にアコースティック・ギター奏者として参加したことから始まります。ここではジャズ、ブルース、ソウルといったブラックミュージックに傾倒しました。1965年春、彼は仲間と共にロンドンへ移り、「ボズ・ピープル」を結成。マーキー・クラブや各地の米軍基地などで活動を展開します。このバンドは同年秋に機材盗難により解散しましたが、バレルは「ボズ」名義でいくつかのシングルを発表するなど、1960年代後半を通じて様々なローカルバンドでボーカリストとしての経験を積みました。特に1968年に発表したボブ・ディランのカヴァーシングル「I Shall Be Released / Down In The Flood」は、当時デレク・ローレンスがプロデュースし、第1期ディープ・パープルのメンバーが演奏に参加したことでも知られています。
1970年10月、当時所属していたバンドの解散後、バレルはロバート・フリップの紹介でプログレッシブ・ロックの雄、キング・クリムゾンのボーカリストオーディションを受け、見事に合格しました。この時のバンドは同時に新しいベーシストを探していましたが、適任者が見つからずに難航していました。そんな中、スタジオに残されていたベースをバレルが弾いているのを見たフリップが、彼にベース兼任を提案するという驚くべき事態が起こります。ギター経験はあったものの、ベースは未経験だったバレルは、フリップから集中的な指導を受け、短期間でベーシストとしてデビューすることになります。1971年4月からは、フリップ、木管楽器のメル・コリンズ、ドラムのイアン・ウォーレスと共に、ボーカルとベースを担当する異例のラインナップでステージに立ちました。
この編成は、フリップが他のベーシストを探し続ける一方で、コリンズとウォーレスがバレルのベース技術向上を理由に継続を望むなど、内情は複雑でした。しかし、バレルは1971年12月発表のアルバム『アイランズ』でもボーカルとベースを兼任。この時期のキング・クリムゾンは、『アースバウンド』などのライブ音源にもその足跡を残しています。しかし、アルバム発表後、バンドはフリップと他のメンバー（特にフリップと対立して解雇された作詞家のピート・シンフィールド、そしてバレル、コリンズ、ウォーレス）との間に軋轢が生じ、1972年2月からのアメリカ・ツアーを最後に解散に至りました。
キング・クリムゾンでベースを習得したバレルは、以降、ベーシストとしての活動を主軸とします。キング・クリムゾンの解散後、彼はメル・コリンズ、イアン・ウォーレスと共にアメリカに留まり、ブルースのゴッドファーザー、アレクシス・コーナー率いる「スネイプ」に参加しました。ここではスタジオアルバム『アクシデンタリー・ボーン・イン・ニューオーリンズ』やライブアルバムの制作に携わり、ベーシストとしての経験を深めます。その後、セッションミュージシャンとしても活動しました。
そして1973年、彼のキャリアにおいて最も商業的に成功したバンド、「バッド・カンパニー」の結成に関わります。元フリーのポール・ロジャース（ボーカル）とサイモン・カーク（ドラム）、元モット・ザ・フープルのミック・ラルフス（ギター）と共に結成されたこのスーパーグループに、バレルはベーシストとして参加しました。バッド・カンパニーは翌1974年に発表したデビューアルバム『バッド・カンパニー』が全米1位となるなど大成功を収め、バレルは1982年にバンドが活動を停止するまで、計6枚のスタジオアルバム全てに参加し、その重厚なベースラインでバンドサウンドを支えました。在籍中には作曲にも関与するなど、バンドにとって不可欠な存在でした。
バッド・カンパニー解散後、バレルの音楽活動は一時的に落ち着きを見せ、スタジオ経営などを行っていました。1986年にはボーカリストにブライアン・ハウを迎えた新しいバッド・カンパニーに参加しますが、アルバム1枚を制作した後に脱退し、主要な音楽シーンからは距離を置きます。しかし1998年には、オリジナルメンバーによるバッド・カンパニーの再結成に参加し、1999年のベストアルバム『バッド・カンパニー・アンソロジー』発売に伴うツアーで久々に表舞台に立ちました。その後、本格的にジャズに取り組みたいという理由もあり、2002年のツアーには参加しませんでした。2000年代には、旧友であるボーカリスト、タム・ホワイトの「Celtic Groove Connection」で活動するなど、自身のペースで音楽活動を続けました。
2006年9月21日、ボズ・バレルはスペインの自宅で心臓発作により逝去しました。享年60歳でした。
ボーカリストからベーシストへと劇的な転換を果たし、プログレとハードロックという異なるジャンルのトップバンドで活躍したボズ・バレル。彼の多才さと、特にベーシストとしての堅実かつグルーヴィーなプレイは、多くの音楽ファンに記憶されています。
初期活動とボーカリスト時代
バレルの音楽キャリアは、1963年に地元リンカンシャーのバンド「ロンバード・アンド・ティー・タイム・フォー」にアコースティック・ギター奏者として参加したことから始まります。ここではジャズ、ブルース、ソウルといったブラックミュージックに傾倒しました。1965年春、彼は仲間と共にロンドンへ移り、「ボズ・ピープル」を結成。マーキー・クラブや各地の米軍基地などで活動を展開します。このバンドは同年秋に機材盗難により解散しましたが、バレルは「ボズ」名義でいくつかのシングルを発表するなど、1960年代後半を通じて様々なローカルバンドでボーカリストとしての経験を積みました。特に1968年に発表したボブ・ディランのカヴァーシングル「I Shall Be Released / Down In The Flood」は、当時デレク・ローレンスがプロデュースし、第1期ディープ・パープルのメンバーが演奏に参加したことでも知られています。
キング・クリムゾンでの転身
1970年10月、当時所属していたバンドの解散後、バレルはロバート・フリップの紹介でプログレッシブ・ロックの雄、キング・クリムゾンのボーカリストオーディションを受け、見事に合格しました。この時のバンドは同時に新しいベーシストを探していましたが、適任者が見つからずに難航していました。そんな中、スタジオに残されていたベースをバレルが弾いているのを見たフリップが、彼にベース兼任を提案するという驚くべき事態が起こります。ギター経験はあったものの、ベースは未経験だったバレルは、フリップから集中的な指導を受け、短期間でベーシストとしてデビューすることになります。1971年4月からは、フリップ、木管楽器のメル・コリンズ、ドラムのイアン・ウォーレスと共に、ボーカルとベースを担当する異例のラインナップでステージに立ちました。
この編成は、フリップが他のベーシストを探し続ける一方で、コリンズとウォーレスがバレルのベース技術向上を理由に継続を望むなど、内情は複雑でした。しかし、バレルは1971年12月発表のアルバム『アイランズ』でもボーカルとベースを兼任。この時期のキング・クリムゾンは、『アースバウンド』などのライブ音源にもその足跡を残しています。しかし、アルバム発表後、バンドはフリップと他のメンバー（特にフリップと対立して解雇された作詞家のピート・シンフィールド、そしてバレル、コリンズ、ウォーレス）との間に軋轢が生じ、1972年2月からのアメリカ・ツアーを最後に解散に至りました。
アレクシス・コーナー、そしてバッド・カンパニーへ
キング・クリムゾンでベースを習得したバレルは、以降、ベーシストとしての活動を主軸とします。キング・クリムゾンの解散後、彼はメル・コリンズ、イアン・ウォーレスと共にアメリカに留まり、ブルースのゴッドファーザー、アレクシス・コーナー率いる「スネイプ」に参加しました。ここではスタジオアルバム『アクシデンタリー・ボーン・イン・ニューオーリンズ』やライブアルバムの制作に携わり、ベーシストとしての経験を深めます。その後、セッションミュージシャンとしても活動しました。
そして1973年、彼のキャリアにおいて最も商業的に成功したバンド、「バッド・カンパニー」の結成に関わります。元フリーのポール・ロジャース（ボーカル）とサイモン・カーク（ドラム）、元モット・ザ・フープルのミック・ラルフス（ギター）と共に結成されたこのスーパーグループに、バレルはベーシストとして参加しました。バッド・カンパニーは翌1974年に発表したデビューアルバム『バッド・カンパニー』が全米1位となるなど大成功を収め、バレルは1982年にバンドが活動を停止するまで、計6枚のスタジオアルバム全てに参加し、その重厚なベースラインでバンドサウンドを支えました。在籍中には作曲にも関与するなど、バンドにとって不可欠な存在でした。
その後のキャリアと晩年
バッド・カンパニー解散後、バレルの音楽活動は一時的に落ち着きを見せ、スタジオ経営などを行っていました。1986年にはボーカリストにブライアン・ハウを迎えた新しいバッド・カンパニーに参加しますが、アルバム1枚を制作した後に脱退し、主要な音楽シーンからは距離を置きます。しかし1998年には、オリジナルメンバーによるバッド・カンパニーの再結成に参加し、1999年のベストアルバム『バッド・カンパニー・アンソロジー』発売に伴うツアーで久々に表舞台に立ちました。その後、本格的にジャズに取り組みたいという理由もあり、2002年のツアーには参加しませんでした。2000年代には、旧友であるボーカリスト、タム・ホワイトの「Celtic Groove Connection」で活動するなど、自身のペースで音楽活動を続けました。
2006年9月21日、ボズ・バレルはスペインの自宅で心臓発作により逝去しました。享年60歳でした。
ボーカリストからベーシストへと劇的な転換を果たし、プログレとハードロックという異なるジャンルのトップバンドで活躍したボズ・バレル。彼の多才さと、特にベーシストとしての堅実かつグルーヴィーなプレイは、多くの音楽ファンに記憶されています。
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