レフ・ナウモフ

レフ・ニコラエヴィチ・ナウモフ

レフ・ニコラエヴィチ・ナウモフ（1925年2月12日生 - 2005年8月21日没）は、旧ソビエト連邦出身の著名なピアニスト、作曲家、そして音楽教師です。彼は、伝説的なピアニスト兼教育者であるゲンリフ・ネイガウスの傑出した弟子として知られ、長年にわたりモスクワ音楽院で教鞭を執り、多くの優れた後進を育てた功績から、「ロシア・ピアノ楽派の領袖」と称されました。

生涯と教育

ナウモフは1925年にロストフで生まれました。音楽への道を志し、モスクワ音楽院に進学。1950年までの期間、この名門校で研鑽を積みました。ピアノ演奏を主としながらも、作曲の分野にも深く取り組み、ヴィッサリオン・シェバリーンやアナトーリー・アレクサンドロフといった当時の重鎮たちから指導を受けました。この音楽院での学びは、演奏家としてだけでなく、作曲家、そして教育者としての彼の基盤を築きました。

ネイガウスの後継者として

ナウモフの芸術的キャリアにおける最も重要な師は、疑いなくゲンリフ・ネイガウスでした。ナウモフはネイガウスのもとで才能を開花させ、その高弟となります。1955年からは、ネイガウスの息子スタニスラフや、エフゲニー・マリーニンと共に、師の指導を支える助手として活動しました。同年、ネイガウスが逝去すると、ナウモフはその後任としてモスクワ音楽院の教授に迎えられます。これは、ネイガウスが築いた教育の伝統をナウモフが最も正統に継承できる人物であると認められた証でした。

ロシア・ピアノ楽派を牽引した教育者

教授就任以降、ナウモフは生涯を終えるまでの約50年間、一貫してモスクワ音楽院で教鞭を執り続けました。彼の教育者としての影響力は絶大であり、単に技術を伝えるだけでなく、音楽作品の精神性、深い芸術表現、そして演奏家としての人間性を重視する指導を展開しました。その結果、ナウモフの門下からは、国際的な音楽コンクールで輝かしい成績を収め、世界の主要なコンサートホールで活躍する数多くの名ピアニストが輩出されました。

彼の指導を受けた著名なピアニストとしては、以下のような人々が名を連ねています。

アレクセイ・リュビモフ
アレクセイ・スルタノフ
アンドレイ・ホテーエフ
アンドレイ・ガヴリーロフ
コンスタンチン・シチェルバコフ
アンア・マリコヴァ
アレクセイ・ナセトキン
エフゲニー・コロリョフ
ボリス・ペトルシャンスキ
ララ・アスタノヴァ
* イム・ドンヒョク

これらの門下生の目覚ましい活躍こそが、ナウモフが「ロシア・ピアノ楽派の領袖」と称された最大の理由です。彼はネイガウスから受け継いだ芸術的遺産を見事に守り、発展させ、ロシア・ピアノ教育の黄金時代を築き上げたのです。

その他の活動と栄誉

ナウモフはあまり知られていませんが、作曲活動も行っており、交響曲や弦楽四重奏曲、ピアノ・ソナタ、カンタータ、連作歌曲といった様々なジャンルの作品を創作しました。

また、晩年には師ネイガウスとの思い出をまとめた回想録『ネイガウスを楯にして』（独: „Unter dem Schild von Neuhaus“）を著し、貴重な記録を残しました。

長年にわたる音楽教育への貢献が認められ、ナウモフはロシア人民芸術家の栄誉に輝きました。

2005年8月21日、レフ・ニコラエヴィチ・ナウモフはモスクワにて80年の生涯を閉じました。彼は、偉大な教育者として、そしてロシア・ピアノ楽派の確かな伝統を次世代へと繋いだキーパーソンとして、クラシック音楽史にその名を刻んでいます。

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