レンカク

レンカク（Hydrophasianus chirurgus）

レンカクは、鳥類の中でも特異な存在であり、チドリ目レンカク科に分類される一種です。この種は、Hydrophasianus属で唯一の存在として知られています。主にユーラシア大陸南東部からスリランカ、台湾、フィリピンにかけて分布しており、繁殖シーズン中に見られます。特に、インドから中国にかけての地域がその繁殖域として知られています。北方で繁殖する個体は越冬にインドネシアやマレーシアなど暖かい地域へ移動します。

日本では、レンカクは迷鳥として観察されることが多く、本州、四国、九州、そして南西諸島で数回の記録がありますが、近年では南西諸島においてほぼ毎年観察されています。特に夏から秋にかけての間に見られることが多いですが、越冬する個体も存在します。

形態

レンカクの体長は31から58センチメートルで、夏羽の時期には尾羽が長くなり、頭部や翼は白色、首の後ろは黄色、体全体は黒褐色の羽毛で覆われます。冬には尾が短くなり、目から胸にかけて黒い線が走ります。このように羽毛の色は季節によって異なります。また、背中の羽毛も冬になると薄くなるのが特徴です。

この鳥の最も特異な点の一つは、非常に長い後肢の指と爪です。これにより、レンカクは水面に浮かぶスイレンやヒシの葉の上を歩くことができ、まるでかんじきのように体重を分散させることができます。

生態

レンカクは湖や池沼といった生息環境を好み、そこで水草を束ねて浮き巣を作ります。食性は雑食で、植物の根や茎をはじめ、昆虫類や甲殻類、貝類なども食べます。繁殖シーズンには「ピー　ピー」という鳴き声を響かせ、それ以外の時期には「チュー　チュー」と鳴くことが多いです。この繁殖期は5月から9月にかけて行われます。

繁殖形態は卵生で、一度に3から4個の卵を産みます。興味深いことに、レンカクは一妻多夫制をとっており、卵や雛の世話は主にオスが担当します。このため、オスはメスにとって希少な資源となります。しかし、メスはオスの巣に侵入し、既存の雛を攻撃することが観察されています。この行動は性的対立の一環と考えられており、その後、オスは新たなメスとつがい、再び雛を育てることになります。

ヒナは孵化後すぐに歩き始め、その後泳ぎや水中に潜ることも可能で、非常に早くから独立した行動をとります。これは、レンカクが氾濫の危険がある場所で育つために進化した繁殖形態と言えるでしょう。

レンカクはその独特な習性と美しい姿から、多くのバードウォッチャーや愛好家に注目されています。

もう一度検索