レンフェ103系電車

レンフェ103系電車

レンフェ103系電車は、スペインの鉄道事業者レンフェが運行する高速列車AVE用の動力分散方式車両です。シーメンスがICE 3をベースに開発した「ヴェラロ」シリーズの最初の車両です。

歴史

2001年、シーメンスはレンフェの競争入札で、マドリード＝バルセロナ高速鉄道線用の高速車両32編成を受注しました。これはICE 3をベースにしたもので、以下の点が変更されました。

出力増強: ICE 3の8,000 kWから8,800 kWへ増強
起動加速度の向上: 2時間30分運転を実現するため
空調機能の強化: スペインの気候（寒冷な山地や40℃近い高温）に対応
回生ブレーキの採用: ICE 3の渦電流ブレーキは信号システムに悪影響を及ぼすため

当初、ICE 3の部品メーカーはシーメンスへの部品提供を拒否しましたが、シーメンスは独自に開発を行い、納期遅延と2100万ユーロの支払いを経て、高速鉄道車両の技術を確立しました。

103系は350 km/hでの走行が確認されており、2006年には試験走行で403.7 km/hを記録しました。これはスペイン鉄道での通常列車編成における最高速度記録です。その後、レンフェは10編成を追加発注し、2010年時点では26編成が営業運転に使用されています。

性能

103系は、ヴェラロシリーズのCRH3やAGVなどと共に、世界最速クラスの高速鉄道車両です。動力分散方式を採用したことで、従来のAVE車両（100系、102系）と比較して、以下の利点があります。

客室スペースの拡大: 編成両端の動力車が不要
定員増加: 編成あたり約20%増加
加速・登坂能力の向上
エネルギー効率の向上

編成は4M4Tで構成され、電動車はそれぞれ2つの動力台車を装備しています。4両ごとに独立したユニットとなっており、それぞれ独立した電力系統を持っています。定員は404名で、3つのクラスに分かれています。

先頭車の運転席背後には液晶ガラスのスクリーンがあり、前面展望が可能です。ただし、103系ではこの部分に座席ではなく会議室が設けられています。

営業運転

103系の営業運転は2007年6月22日に開始され、マドリード - タラゴナ間を結びました。当初は350 km/h運転を予定していましたが、保安装置の準備が間に合わず、最高速度は300 km/hに制限されました。その後、コルドバ - マラガ間の高速新線開業により、マドリード - マラガ間にも投入されています。2008年にはマドリード＝バルセロナ高速鉄道線の全線が開業し、103系はマドリード - バルセロナ間を2時間38分で結ぶ最速列車として活躍しています。

参考文献

三浦幹男・秋山芳弘『世界の高速列車』地球の歩き方 ダイヤモンド・ビッグ社

外部リンク

Renfe AVE Serie 103 （スペイン語）
* Renfe AVE S103 動画で見る Youtube

もう一度検索