AVE

スペイン高速鉄道AVE：その概要と詳細

AVE（アベ）は、スペイン国鉄（RENFE）が運営する高速鉄道システムであり、「Alta Velocidad Española」（スペインの高速）の略称です。同時に、スペイン語で「鳥」を意味し、翼を広げた鳥が列車のシンボルマークとして用いられています。

技術と車両

初期のマドリード-セビリア間では、フランスのTGV技術を導入した車両が使用されましたが、軌道や信号システムにはドイツの高速鉄道技術（LZB）が採用されました。その後、マドリード-バルセロナ間では、ドイツのICE3をベースにしたヴェラロE（Velaro E）と、スペイン国内で開発されたタルゴ350が導入され、最高営業速度350km/hを目指しましたが、信号システムの不具合により300km/hに留まっています。現在の最高速度は310km/hです。

将来的なヨーロッパ各国の高速鉄道網への接続を見据え、スペインの他の広軌路線とは異なり、標準軌（1,435mm）を採用しています。

路線と歴史

AVEは、1992年のセビリア万博に合わせてマドリード-セビリア間が開業しました。その後、マドリード-バルセロナ間の建設が進み、2008年に全線が開通しました。また、各地で高速新線と既存の広軌路線を跨いで走行できる軌間可変電車Alviaが運行されています。

車内サービス

座席は、クルブ（特等車）、プレフェレンテ（1等車）、トゥリスタ（2等車）の3クラスに分かれています。クルブとプレフェレンテでは食事サービスがあり、天井のモニターでビデオサービスが提供されるなど、航空機との競争を意識したサービス展開が行われています。

遅延に対する保証

30分以上の遅延の場合には100％、15分から30分未満の遅延の場合には50％の払い戻し制度があります。ただし、ダイヤに余裕があるため、実際には遅延はほとんどなく、むしろ定刻よりも早く到着することが多いです。

路線詳細

主な路線は以下の通りです。

アンダルシア方面（南回廊）: マドリード - コルドバ - セビリア、マラガ、グラナダ
北東回廊: マドリード - サラゴサ - バルセロナ、ウエスカ
東回廊: マドリード - クエンカ - バレンシア、アルバセーテ、アリカンテ、カステリョン・デ・ラ・プラナ、オリウエラ、ムルシア
北回廊: マドリード - セゴビア - バリャドリッド、レオン
北西回廊（大西洋線）: オウレンセ - サンティアゴ・デ・コンポステーラ - ア・コルーニャ、ビーゴ
トレド線: マドリード - トレド

整備計画と国際接続

当初の計画では、フランスのTGVとの接続が目的であり、2013年12月からスペイン-フランス間の直通運転が開始されました。

スペイン政府は、2010年までに全ての州都とマドリードを4時間以内、バルセロナと6時間30分以内で結ぶための高速鉄道網の建設を計画しており、これにより国内の移動時間が大幅に短縮されることが期待されています。現在でも、AVEが整備されている地域とそうでない地域の間で、移動時間に大きな差があります。例えば、レオン-バルセロナ間は、マドリード経由で大幅に移動時間が短縮されました。

問題点

マドリード-バルセロナ間の高速新線は、地質学的な問題から当初計画していた最高速度で走行できていません。また、バルセロナでは、19世紀の建物の基礎下にトンネルを敷設する計画が住民の反発を招き、サグラダ・ファミリアへの影響も懸念されています。さらに、AVEにはホームと車両の間に階段があり、車椅子利用者が単独で乗車できないというアクセシビリティの問題も指摘されています。

建設中の路線

現在、以下の路線の建設が進められています。

北回廊: ベンタ・デ・バニョス - ブルゴス - ビトリア＝ガステイス、ビルバオ - ビトリア＝ガステイス - サン・セバスティアン
南西回廊: カセレス - メリダ - バダホス（ポルトガル方面への延伸も計画中）

事故

2013年7月24日には、サンティアゴ・デ・コンポステーラ近郊で脱線事故が発生し、多くの死傷者が出ました。この事故は、スペインの鉄道史上最悪の事故の一つとして記録されています。

年表

1992年4月21日：マドリード-セビリア間開通
2003年10月11日：マドリード-リェイダ間開通
2008年2月20日：バルセロナまで延伸
2013年7月24日：サンティアゴ・デ・コンポステーラ近郊で脱線事故
* 2013年12月15日：TGVがバルセロナまで直通運転開始、AVEがリヨン、マルセイユ、トゥールーズまで直通運転開始

AVEは、スペイン国内の移動を大きく変革した高速鉄道システムです。今後の路線拡張や国際接続により、さらなる発展が期待されます。

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