レー (インドの都市)

レーは、インド北部、ラダック連邦直轄領に位置する、ラダック地方最大の中心都市です。かつての王都であり、現在はラダック自治山間開発評議会の議会が置かれています。商業と交通の要衝として、また観光の拠点として重要な役割を担っています。この地域はチベット文化圏に属し、住民の多くがチベット民族であるため、「インドのチベット」と呼ばれることもあります。

地理と交通

レーは標高約3650mの高地に位置し、周囲を山々に囲まれています。デリーからの空路が一般的で、レー空港まで約1時間でアクセスできます。陸路では、タクランラ峠を越えるルートがありますが、標高5360mと高いため、夏季のみの通行となります。主要なアクセス道路としては、スリナガルとレーを結ぶスリナガル-レーハイウェイ、マナリとレーを結ぶレー-マナリハイウェイがあり、どちらも5月初旬から10月末頃まで開通しています。冬期は雪のため閉鎖されることが多いですが、インダス渓谷の地方道路は比較的開いた状態を保っています。現在、新たな道路の建設も進められています。

気候

レーは、ケッペンの気候区分でいうところの寒い砂漠気候に属しており、年間を通して降水量が少ないのが特徴です。特に11月下旬から3月上旬にかけては厳しい冬となり、気温は氷点下を大きく下回ります。冬には時折降雪がありますが、その他の季節は晴天の日が多く、日中は比較的暖かいです。年間降水量はわずか100mm程度と非常に少ないですが、2010年には鉄砲水が発生し、大きな被害をもたらしました。

農業

レーの農業は、標高が高いため、ほとんどの地域で年に一度しか作物を栽培できません。主な作物は裸大麦であり、地元の人々はこれを主食としています。大麦から作られる「ツァンパ」は、この地域の伝統的な食文化を代表するものです。農業用水はインダス川から供給されますが、大麦の灌漑が必要となる3月と4月には水不足が課題となっています。

観光

レーは、ラダック観光の拠点として、300近くの宿泊施設があり、タクシーや旅行会社も多く存在します。主な観光スポットとしては以下のものがあります。

レーパレス：レーの丘の上に立つ旧王宮で、1600年頃に建てられました。9階建てで、上層階は王室、下層階は厩舎や貯蔵庫として使われていました。現在は大部分が劣化していますが、入り口の木造の門や、内部に残るチベットのタンカや絵画など、歴史を感じさせる装飾が残っています。一説には、ラサにあるポタラ宮のモデルになったとも言われています。
レー旧市街：古くからの建築様式を残す旧市街は、気候変動による降雨量の増加により、世界遺産基金の絶滅危惧地リストに登録されています。伝統的な家屋や路地が残っており、歴史的な街並みを散策できます。
メインバザール：2016年から2018年にかけて大改修が行われ、スーパーマーケット、露店、トレッキンググッズ店、パシュミナ店などが立ち並びます。地元の人々や観光客で賑わう活気ある場所です。
ジャマーマスジッド：メインバザールの一角にあるムスリムのための教会で、近くにはムスリムが経営するパン屋もあります。レーにおける多文化共生の一例です。
ナムギャルツェモゴンパ：1430年に建てられた寺院で、弥勒菩薩の像や古代の写本、フレスコ画が残されています。歴史的な宗教施設として、多くの人々が訪れます。
シャンティストゥーパ：1991年に建てられた仏塔で、仏陀の遺物が納められています。高台に位置しているため、レーの街を一望できる絶景スポットとして人気があります。
サンカゴンパ：レー北部にある寺院で、レーの街から徒歩でアクセスできます。歴史的な建造物や美しい景観を楽しむことができます。
ラダックマラソン：レーで開催される国際マラソンで、高地でのマラソンとして知られています。ラダック自治山開発評議会の支援のもと、毎年多くのランナーが参加します。
* ダトゥンサヒブ：メインバザール近くにある聖木で、地元の人々から崇拝されています。

レーは、豊かな自然と歴史的な文化が融合した魅力的な都市です。訪れる人々は、その独特の景観や文化に触れ、忘れられない体験を得ることができるでしょう。

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