レーゲンスブルク市電

レーゲンスブルク市電（Straßenbahn Regensburg）は、かつてドイツ（旧西ドイツ）の古都レーゲンスブルクに存在した路面電車網です。1903年にその歴史を開始し、およそ60年後の1964年に惜しまれつつ運行を終了しました。しかし、半世紀以上の時を経て、2020年代を迎えた現在、市主導による新たな路面電車（シュタットバーン）システムの建設計画が進められています。

歴史

レーゲンスブルクにおける初の公共交通機関は、1837年にウンターラー・ヴェールトとの間を結び始めた蒸気船に遡ります。1850年代以降は周辺都市と結ぶ鉄道網が整備されましたが、市内の交通は短命に終わった乗合馬車に限られており、発展に伴う都市の拡大が進む中で、より利便性の高い移動手段の整備が喫緊の課題となっていました。

こうした背景から、道路整備と合わせて路面電車を市内に導入するプロジェクトが始動しました。1899年にはニュルンベルク電力会社に建設の許可が下り、最初の2系統の建設が開始されました。道路経路の変更や沿線家屋の改修などを経て試運転が成功裏に終わった後、1903年 4月21日に待望の営業運行が始まりました。

開業後、路線網は順次拡大されました。同年8月からの延伸を皮切りに、1911年、1915年、1927年、1933年、1936年と拡張が進み、最盛期には線路長17キロメートル、4系統（1号線から4号線）を擁する規模となりました。また、1909年には路線の運営権がニュルンベルク電力会社からレーゲンスブルク市へと移管され、公営交通となりました。

しかし、第二次世界大戦中の戦闘により、路線が経由する橋梁が破壊され、その影響で一部区間は復旧されることなく廃止に追い込まれました。戦災を免れた路線は戦後も運行を続けましたが、自動車社会への移行が進み交通量が増加したことや、同時期に進められたトロリーバス網の整備なども相まって、1950年代以降は段階的に廃止・撤去が進められました。そして、最後まで残った営業距離7.5キロメートルの区間も、1964年 8月1日の「さよなら運転」をもってその姿を消しました。

車両

レーゲンスブルク市電の開業時から1920年代にかけて導入された車両は、全てニュルンベルクに工場を構えていたMAN社製でした。開業時に投入されたのは16両の2軸電動車で、乗客増に対応するため、後にヴュルツブルク市電から譲り受けた付随車を牽引する運用も行われました。その後も、輸送力増強や路線網の延伸に合わせて、車体を大型化した電動車や多数の付随車が増備されました。

これらの車両のうち、1910年代までに製造された車両は、戦後の新造車導入や路線廃止に伴い順次引退し、一部は事業用車両に改造されました。一方、1920年代以降に増備された車両には、集電装置の交換や方向指示器、電磁吸着ブレーキ、ブレーキ灯の設置など、安全対策を中心とした近代化改修が施され、レーゲンスブルク市電の歴史を閉じるその日まで運行を担いました。

戦後、1955年に導入されたのは、ミュンヘンのラートゲーバー社製の2軸車です。これらは当時の西ドイツ各地の路面電車事業者との共同発注により製造された標準的な車両で、電動車4両と付随車4両が投入されました。

レーゲンスブルク市電の廃止後、これらのラートゲーバー社製車両は全てダルムシュタット市電に引き取られました。そのうち、電動車1両と付随車1両が1990年にレーゲンスブルクへと「里帰り」を果たし、現在は「レーゲンスブルク歴史的路面電車協会」によって修繕・保存活動が行われています。また、ダルムシュタット市電には2両の付随車が現存しており、1両は団体用車両として使用されています。

シュタットバーン建設計画

1964年の路面電車廃止以降、レーゲンスブルク市内の交通の主役は自動車となりました。しかし、長年にわたり交通量が増え続け、市内の道路が慢性的に混雑するという課題に直面するようになりました。この状況を改善するため、1990年代後半から新たな路面電車（シュタットバーン、またはライトレールとも称される）の導入が、選挙や市議会で議論されるようになりました。

2000年代以降、複数回にわたる実現可能性調査が行われ、その結果を踏まえ、2018年には市議会で将来的な導入方針が承認されました。最初の段階として、市内の主要なルートを網羅する営業距離14.5キロメートル、2系統の路線が計画されています。新たな路面電車システムの開業は、早くとも2020年代以降が見込まれており、レーゲンスブルク市に再びレールのある公共交通が誕生することになります。

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