ロサンゼルス鉄道

ロサンゼルス鉄道： 黄色の路面電車の興亡と復活への希望

ロサンゼルス鉄道（Los Angeles Railway、略称LARy、後にLos Angeles Transit Linesと改称）は、1901年から1963年までカリフォルニア州ロサンゼルスとその周辺地域において、人々の足として活躍した路面電車でした。2路線のケーブルカーを除き、1067mmという軌間を採用していました。同時期にロサンゼルスで運行されていたパシフィック電鉄（Red Cars）よりも多くの乗客を運び、ロサンゼルスの発展に大きく貢献しました。両社はホーソン・ブルバード沿線の一部区間において、軌間1435mmと1067mmのデュアルゲージ軌道を共有していました。

創業と黄金時代

1898年、鉄道王にして不動産王でもあったヘンリー・E・ハンティントンによって買収されたロサンゼルス鉄道は、1901年に営業を開始しました。その後、20路線以上、車両1250両以上という規模にまで成長。ロサンゼルスの中心部から、エコーパーク、ウェストレイク、ハンコックパーク、博覧会公園といった主要地域はもちろん、西アダムス、クレンショー、ヴァーノン、ボイルハイツ、リンカーンハイツといった周辺地域まで、その営業範囲は広範囲に渡りました。まさにロサンゼルスの発展を支える重要な交通手段として、人々の生活に深く根付いていたのです。

衰退とバスへの転換

1945年、ハンティントンの相続人は、全米各地の交通システムを買収していたナショナル・シティラインにロサンゼルス鉄道を売却しました。しかし、ナショナル・シティラインは、ファイアストン、スタンダードオイル（現在のシェブロン）、ゼネラルモーターズといった大企業と共に、ローカル輸送会社へのバスおよび関連製品の販売独占を企てる共謀行為で有罪判決を受けました。これはアメリカ路面電車スキャンダルとして知られる事件であり、ロサンゼルス鉄道の衰退の大きな要因の一つとなりました。翌年にはカリフォルニア北部で路面電車を運営していたキー・システムも買収しています。

社名はロサンゼルス・トランジット・ラインへと変更され、新たな経営陣はブリル製のトロリーバス40両を導入しました。これらの車両は、当初キー・システムがオークランドでのトロリーバス運行のために導入を予定していたものですが、ナショナル・シティラインによってバスへの転換が決定されたものです。

1940年代後半から1950年代初頭にかけて、多くの路線がバスに転換されました。これは、自動車の普及による利用客の減少や、バス運行の方が効率的であるという判断によるものでした。路面電車という時代は終わりを告げようとしていたのです。

公有化と廃止

最後まで存続していた路線は、1958年にパシフィック電鉄の残存路線と共に、ロサンゼルス都市圏交通局（現在のロサンゼルス郡都市圏交通局の前身）に引き継がれました。しかし、時代の流れは止められません。1963年3月31日、ディーゼルバスへの転換を決定。J線、P線、R線、S線、V線という5路線の路面電車と、2路線のトロリーバス路線が廃止されたのです。長きに渡りロサンゼルス市民の生活を支えた路面電車は、ついにその役目を終えました。

復活への動き

しかし、ロサンゼルス鉄道の歴史は完全に終焉を迎えたわけではありません。2011年5月、ロサンゼルス郡都市交通局、ロサンゼルス市、関係者らは、ダウンタウンにおける路面電車復活の可能性を探るため、研究や市民集会を実施開始しました。路面電車の復活は、ダウンタウンの歴史的中心街の活性化、雇用創出、観光客誘致などに繋がる可能性があり、多くの期待が寄せられています。ロサンゼルスの発展を支えた路面電車が再び街を駆け巡る日は、そう遠くないかもしれません。

廃止前の路線一覧

ロサンゼルス鉄道は、数多くの路線を運行していました。その路線網は、ロサンゼルスの広範囲をカバーし、人々の生活に密着したものでした。ここでは、廃止された路線の一部をご紹介します。（以下、路線ごとの詳細な経路は省略）

2号線、3号線、5号線、7号線、8号線、9号線、10号線、A線、B線、D線、F線、G線、H線、J線、K線、L線、N線、O線、P線、R線、S線、U線、V線、W線、そして2路線のケーブルカー「エンジェルス・フライト」と「コート・フライト」。

これらの路線は、それぞれ異なる地域を結び、ロサンゼルスの発展を支えてきました。その歴史は、ロサンゼルスの歴史そのものと言えるでしょう。

エンジェルス・フライトの復活

なお、エンジェルス・フライトは、移設の上で現存し、動態保存が行われています。一時期運休状態にあったものの、2017年に映画『ラ・ラ・ランド』をきっかけに運行が再開されました。これは、ロサンゼルス鉄道の歴史を象徴する出来事であり、復活への希望を繋ぐものと言えます。

ロサンゼルス鉄道の物語は、単なる路面電車の歴史にとどまりません。それは、都市の発展と衰退、そして人々の生活と密接に絡み合った、ロサンゼルスの歴史そのものです。そして、その歴史は、現在もなお、未来への希望を繋ぎ続けています。

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