ロシアによるウクライナ4州の併合宣言

ロシアによるウクライナ4州併合宣言：国際社会の激震

2022年9月30日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ東部・南部4州（ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州）の併合を宣言しました。この宣言は、ロシアによるウクライナ侵攻の最中に、国際社会に大きな衝撃を与えました。

併合の経緯

併合に至る過程は、ロシアが占領した地域での住民投票から始まりました。2022年9月23日から27日にかけて行われたこの「住民投票」では、ロシアへの編入が各州で90%前後の支持を得たと発表されました。しかし、この投票はロシア側の管理下で行われ、兵士や警察官が戸別訪問を伴うなど、その公正性には重大な疑念が残ります。

プーチン大統領は9月29日に4州の「独立」を一方的に承認し、翌30日には、4州の親ロシア派代表と「併合条約」を締結しました。この条約は、ロシア連邦憲法裁判所によって合憲と判断され、ロシア連邦議会によって承認されました。さらに、プーチン大統領は10月5日、これらの4州をロシア連邦に編入するための法的手続きを完了しました。


併合された地域は、ロシアが「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」として独立を承認した地域と、残りの2州（ザポリージャ州とヘルソン州）です。ロシアはこれらの地域を新たな連邦構成主体として組み込むことで、自国領土を拡大しました。

併合の背景とロシアの主張

ロシア側は、今回の併合を「数百万の人々の意思」に基づいたものと主張しました。プーチン大統領は、「ルガンスク、ドネツク、ヘルソン、ザポロジエ（ザポリージャ）に住む人々は永遠にわれわれの同胞となる」と述べ、併合は歴史的な祖国であるロシアとの再会であると強調しました。また、ウクライナという国家自体がロシアによって作られたものであるという主張も展開しました。

一方、ウクライナ政府や西側諸国は、この併合を国際法違反であり、ロシアによる領土侵略行為であると非難しました。また、住民投票の結果についても、自由かつ公正なものではないとしてその正当性を否定しています。併合手続きの時点で、ウクライナ軍は反転攻勢により一部地域を奪還しており、ロシアによる実効支配は4州全域には及んでいません。

ウクライナの対応

ウクライナ政府は、この併合を法的にも政治的にも決して認めず、自国領土の回復を目指し、東南部への反攻作戦を継続しています。ウクライナ保安庁は、住民投票に協力した人々を特定し、刑事訴追を進めています。

また、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、この併合宣言を強く非難し、北大西洋条約機構（NATO）への加盟申請を行うことを表明しました。さらに、プーチン大統領との和平交渉は不可能であるとする法令に署名し、ロシアとの対話を拒否する姿勢を明確にしました。

国際社会の反応

国際社会は、ロシアの併合宣言に対して強く非難しました。

国際連合： アントニオ・グテーレス事務総長は、「併合のためのいかなる決定も法的な価値を持たず」、国連憲章と国際法違反であると非難しました。また、国連総会では、ロシアによるウクライナ4州併合は無効だとする決議が143か国の賛成で採択されました。
G7： 主要7か国（G7）外相は共同声明で、「最も強い言葉で非難する」と述べ、併合を断じて容認しない旨を表明しました。
NATO： イェンス・ストルテンベルグ事務総長は、この併合を「最も深刻なエスカレーション」と批判しました。ウクライナのNATO加盟申請については、中欧・東欧のNATO加盟9か国が支持を表明しましたが、全加盟国の同意を得るのは難しい状況です。
各国： アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、日本など多くの国が、ロシアの併合を非難し、対ロシア制裁を強化しました。トルコ、セルビア、カザフスタンなどの国々も、国際法の原則を守るという立場から、併合を容認しないと表明しました。

今後の展望

今回のロシアによるウクライナ4州併合は、国際秩序を大きく揺るがす出来事となりました。国際社会は、ロシアへの制裁を強化し、ウクライナへの軍事支援を継続することで、ロシアの行動を阻止しようとしています。しかし、ロシアはウクライナへの攻撃を継続しており、事態の収束は見通せない状況です。

この併合は、ウクライナの領土保全の問題だけでなく、国際法の尊重、国家主権、そして世界の平和と安定という、より大きな問題を提起しています。今後、国際社会はどのように対応していくのか、その動向が注目されます。

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