ロスト・バケーション

ロスト・バケーション

『ロスト・バケーション』（原題: The Shallows）は、2016年に公開されたアメリカ合衆国のスリラー映画です。原題の「Shallows」が示す通り、「浅瀬」という状況が物語の鍵となります。

物語

医師を志すナンシーは、若くして他界した母が過去に訪れたという、隠れ家のようなビーチを訪れます。多忙な学業や、残された父と幼い妹の世話から解放され、心身を休めるための休暇でした。一人、サーフィンを楽しむナンシーでしたが、突如として巨大なホホジロザメの襲撃に遭い、負傷してしまいます。彼女はわずかな岩礁の上に逃れることに成功しますが、満潮によって陸地が沈むまで時間は少なく、周囲には危険なサメが待ち構えています。孤立無援の状況下、ナンシーは限られた物資と持ち前の知識、そして決して諦めない強い精神力で、絶望的な状況からの脱出を試みます。

登場人物

ナンシー・アダムズ（演: ブレイク・ライヴリー / 日本語吹替: 甲斐田裕子）
医学生であり、サーフィンを愛する女性。母の死を引きずり、一見脆さも持ち合わせていますが、サメとの遭遇という極限状況では、怪我を負いながらも冷静に状況を分析し、打開策を模索する強い意志を見せます。
カルロス（演: オスカル・ハエナダ / 日本語吹替: 斉藤次郎）
ナンシーをビーチまで送り届けた地元の男性。ナンシーの家族とも面識があり、物語の冒頭で重要な役割を果たします。
ナンシーの父（演: ブレット・カレン / 日本語吹替: 仲野裕）
ナンシーが医師になることを強く望んでいます。
クロエ・アダムズ（演: セドナ・レッグ / 日本語吹替: 朝井彩加）
ナンシーの妹。ナンシーは彼女を非常に可愛がっていますが、妹の方も姉の無茶な行動を心配するなど、姉妹の絆が描かれます。
ナンシーの母（演: ジャネール・ベイリー）
故人。ナンシーに影響を与えた存在であり、若い頃はサーフィンを楽しんでいました。
ミゲル（演: パブロ・カルバ）
ビーチでサッカーをしていた少年。ある発見が物語の始まりにつながります。

制作背景・エピソード

本作の主要なロケ地は、オーストラリア沖合に位置する美しいロード・ハウ島で行われました。ナンシーが見せる華麗なサーフィンシーンは、19歳のプロサーファー、イザベラ・ニコルズがスタントを担当し、ブレイク・ライヴリーにもワックスの塗り方やパドリングなどの指導を行いました。

劇中でナンシーが着用する腕時計はカシオの「BABY-G」とされていますが、作中で描写されるタイドグラフ（潮汐機能）は、実際の該当モデルには搭載されていない機能です。また、ナンシーがカニを手で潰す描写はCGが用いられていますが、実際に食べようとしたのは本物のカニでした。物語に登場するクジラの死骸は、リアリティを追求しつつも安全に配慮し、発泡スチロールで制作されています。

主演のブレイク・ライヴリーは、本作の撮影期間中に第2子を妊娠していたという特筆すべき状況で、過酷な撮影に挑んでいました。

評価

『ロスト・バケーション』は批評家から比較的良好な評価を受けました。映画批評集積サイトRotten Tomatoesでは、200件以上のレビューに基づき78%の支持率を獲得し、特に主演のブレイク・ライヴリーの演技が高く評価されました。Metacriticでは、35件のレビューに基づく加重平均値が59/100となっています。著名な映画評論家リチャード・ローパーは、本作を「暑い夏の鑑賞に最適な娯楽映画」と評し、好意的な見解を示しています。

極限状況でのサバイバルという古典的な題材ながら、緊張感あふれる演出と主演女優の存在感によって、多くの観客を魅了した作品です。

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