ロード・ハウ島

ロード・ハウ島：孤高の自然が息づく世界遺産の島

ロード・ハウ島は、オーストラリア本土から東へ約600km、タスマン海に位置する小さな島です。その独特な地形、気候、そして動植物相は、他に類を見ない貴重な自然環境を育み、1982年にはユネスコの世界遺産（自然遺産）に登録されました。

地理：火山活動と珊瑚礁が織りなす景観

三日月形のロード・ハウ島は、全長約10km、幅約1.5km。約690万年前の楯状火山が、長い年月をかけて海水に浸食されてできた島です。湾の内側には珊瑚礁や干潟が広がり、穏やかな景観を作り出しています。島の南部には、玄武岩でできたリッジバード山（777m）とガウアー山（875m）がそびえ立ちます。これらは、かつて火山のカルデラを形成していた溶岩が冷え固まったもので、島の象徴的な存在となっています。

気候：亜熱帯海洋性気候

ロード・ハウ島は、亜熱帯海洋性気候に属し、年間を通して温暖で降水量も安定しています。特に冬にあたる6月から8月にかけては、気温がやや下がり、降水量もやや多くなりますが、過ごしやすい気候と言えるでしょう。

環境：固有種が息づく生物多様性の宝庫

ロード・ハウ島は、かつて大陸と陸続きになったことがないため、動植物相はすべて海を越えて渡ってきた種を祖先としています。そのため、島の植物の半分以上が固有種という、特異な生態系が育まれています。ヤシ科の Hedyscepe canterburyanaやケンチャヤシ（Howea belmoreana）などがその代表例です。

島には、もともとコウモリ一種しか哺乳類が生息していませんでしたが、ネズミやイノシシなどが移入されました。100種を超える鳥類が生息し、中にはロードハウクイナのような固有種も含まれます。キバラモズヒタキやハイムネメジロ、フエガラスなどの固有亜種も存在します。残念ながら、ロードハウセンニョムシクイやロードハウメジロなど、絶滅してしまった固有種もいます。

かつて島に生息していた固有種の昆虫、ロードハウナナフシは、ネズミなどの捕食により数を減らし、絶滅したと考えられていました。しかし、2001年に近くのボールズ・ピラミッドという小島で、わずかに生息していることが確認され、大きな話題となりました。

歴史：発見から世界遺産登録へ

ロード・ハウ島は、1788年2月に、ノーフォーク島の開拓に向かっていたイギリス海軍によって発見されました。その後、フランス軍との戦いで功績のあったリチャード・ハウにちなんで、その名が付けられました。1833年以降に入植が開始され、1878年からはココヤシの栽培が始まり、観光産業と並び、島の重要な産業となっています。1982年には、周辺の島々と共に、ロード・ハウ島群としてユネスコの世界遺産に登録されました。

環境保護への取り組み

ロード・ハウ島では、島の生態系を守るため、様々な取り組みが行われています。入植者によって持ち込まれた生物を減らす努力が続けられており、特に山羊はすべて駆除されました。イノシシの数も減少し、ネズミや外来植物に関しても、引き続き駆除が進められています。島の約10%が農業用地に転用され、20%が野生化した動物によって荒らされた過去を教訓に、自然との共生を目指した持続可能な開発が進められています。

ロード・ハウ島は、その美しい自然景観と貴重な生態系を守りながら、観光客を受け入れています。一度に滞在できる観光客の数を400人に制限することで、自然環境への負荷を最小限に抑えるよう配慮されています。訪れる人々は、この島の自然の恵みに感謝し、その美しさを未来へと引き継いでいく責任を担っていると言えるでしょう。

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