ロズンジ (紋章学)

ロズンジ（Lozenge）とは

ロズンジ（英: Lozenge、仏: Losange）は、紋章学において、高さよりも幅がわずかに狭い縦長の菱形、または45度傾けた正方形のチャージです。サブオーディナリーに分類され、トランプのダイヤのスートに似ているため、ダイヤモンド形とも呼ばれます。

また、シールド（盾）の代わりに、主に女性の紋章を示すための土台として用いられることもあります。

ロズンジの解説

チャージとしてのロズンジ

ロズンジは、紋章の中で様々なバリエーションを持ちます。代表的なものにフュージル、マスクル、ラスターがあります。

フュージル (Fusil)

ロズンジよりも幅の狭いものをフュージルと呼びます。縦横比による厳密な区別はありませんが、紋章記述においてはロズンジとフュージルは異なるものとして識別されます。

マスクル (Mascle)

マスクルは、ロズンジの外形だけを残し、中を取り除いたものです。外形と同じ形で穴をあけることをヴォイド (voided) といい、lozenge voided と記述しても同じ形になりますが、近代紋章学ではマスクルと記述します。

ラスター (Rustre)

ラスターは、ロズンジに円形の穴を開けたものです。チャージに円形の穴を開けることをピアスト (pierced) と記述するため、lozenge pierced と記述しても同様の形状になります。ラスターの起源は、古代の鎧に縫い付けられた板だという説があります。

フィールド

ロズンジを隙間なく敷き詰めたフィールドは、ロズンジー (lozengy) と呼ばれます。同様に、フュージルのフィールドはフュージリー (fusily) 、マスクルのフィールドはフュージリー (masculy) と呼ばれます。

エスカッシャンとしてのロズンジ

ロズンジは、数世紀にわたり、特に紋章を持つ女性と深く関わってきました。シールドの代わりに女性の紋章を示し、後世に紋章を引き継ぐための伝達手段として用いられてきました。

イギリスとスコットランドでは、未婚女性や未亡人の紋章は、シールドではなくロズンジの上に示されるのが一般的です。クレストやヘルメットは描かれません。ただし、カナダの紋章院は男女平等の観点から、女性の紋章もシールドの上に描きます。

既婚女性は、一部の例外を除き、常に紋章をシールドに示します。例外として、結婚している間も爵位紋章を示すためにロズンジを使う権利を持つ貴族の夫人がいます。

既婚女性の紋章は、夫の紋章と結合されることがあります。例えば、妻と夫の紋章を並べるインペイルメントや、相続人が女性である場合に、夫の紋章を示した大きなシールドの上に妻の紋章を示す「見せかけのエスカッシャン」があります。

離婚した女性は、再婚するまで、先夫の紋章をマスクルでディファレンシングしたものを名目上使用することがあります。

ハッチメント

ロズンジの形は、葬送の際に用いられるハッチメント（忌中紋章）にも使われます。ハッチメントは、黒く塗りつぶしたロズンジの中に死者の紋章を描いたもので、男女両方に用いられます。

ハッチメントには、誕生と死去に関する情報がラテン語で記載されることがあります。

適用例

バイエルン王国のヴィッテルスバッハ家の紋章は、アージェント（銀色）とアジュール（青色）のフュージリーです。この紋章は、現在のドイツ・バイエルン州の州旗や、BMWのロゴマークのデザインの一部となっています。

まとめ

ロズンジは、紋章学において多様な意味と用途を持つ図形です。その形状や関連する図形、フィールドのパターン、エスカッシャンとしての役割、ハッチメントでの使用例などを理解することで、紋章学の世界をより深く知ることができます。

関連項目

紋章学
紋章
* 旗章学

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