メルセン条約

メルセン条約について

メルセン条約（メルセンじょうやく）は870年8月8日に締結され、フランク王国の領土を再定義する重要な文書となりました。この条約は、中部フランク王国の王ロタール2世の死去に伴い、東フランク王国の王ルートヴィヒ2世と西フランク王国の王シャルル2世の間で締結されました。

条約の背景

フランク王国は843年のヴェルダン条約により三つに分割されました。この分割の結果、中央に位置する中部フランク王国が形成され、855年には次代の王ロタール1世が死去した後、彼の三人の息子によってさらに領域が分けられることとなりました。その息子たちは、ロドヴィコ2世（後の神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ2世）、ロタール2世、シャルル（カール）であり、それぞれイタリア、ロタリンギア、プロヴァンスを治めることとなりました。

しかし、863年にシャルルが死去すると、彼の領土はロドヴィコ2世とロタール2世の間で分割されました。この分割後、869年にロタール2世が子を残さずに亡くなると、ルートヴィヒ2世は病気、ロドヴィコ2世はイスラム勢力との戦闘に忙殺されていました。そのため、シャルル2世が同年の9月9日にメスでロタリンギア王として戴冠しました。これにより、間接的に彼はロタール2世の遺産に関心を持つ一方で、ルートヴィヒ2世もまた相続権を主張しました。

メルセン条約の締結

こうした状況下、メルセン条約が結ばれることになり、ロタール2世の遺領であるロタリンギアをルートヴィヒ2世とシャルル2世の間で分割しました。結果として、ロドヴィコ2世はイタリア王国のみを保持することが許可され、メッツやアーヘンを含むロートリンゲン東部や上ブルグントの大半は東フランク王国に帰属しました。一方、ロートリンゲン西部とプロヴァンスは西フランク王国に組み込まれることとなったのです。後に880年のリブモン条約によってロートリンゲン西部は東フランク王国に譲渡され、最終的に現在のイタリア、ドイツ、フランスの国家の基礎が築かれました。

メルセン条約の意義

メルセン条約はただ領土の分割を行っただけでなく、フランク王国の三つの王国間のバランスを整える重要な役割を果たしました。この条約は中世ヨーロッパにおける国家の形成に深く影響を与え、後の歴史の流れにも大きな影響を及ぼしました。基本的な国境が定まり、それぞれの地域が現代の国家に至るまでの基礎を形作ることとなったのです。このように、メルセン条約は歴史の重要な転換点の一つであり、その後の政治的な力関係にさえ影響を与えました。

参考文献

• - 成瀬治、山田欣吾、木村靖二 編『世界歴史大系 ドイツ史 1』山川出版社、1997年7月。ISBN 978-4-634-46120-8。
• - 柴田三千雄、樺山紘一、福井憲彦 編『世界歴史大系 フランス史 1』山川出版社、1995年9月。ISBN 978-4-634-46090-4。
• - 瀬原義生『ドイツ中世前期の歴史像』文理閣、2012年10月。ISBN 978-4-89259-696-4。
• - Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Mersen, Treaty of". Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 18 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 174.

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