ロチェスター地下鉄

ロチェスター地下鉄：幻の地下鉄道と再利用の可能性

ニューヨーク州ロチェスター市に存在したロチェスター地下鉄（Rochester Subway、略称RSB）は、1928年の開業からわずか28年後の1956年に全線廃止された、短い歴史を持つ地下鉄です。しかし、その歴史は路面電車の地下化というユニークな始まりから、インターアーバンとの接続、貨物輸送への転用、そして将来的な再利用計画へと、様々な展開を見せています。

路面電車の地下化からインターアーバン接続へ

RSBは、ボストンのグリーンラインと同様に、既存の路面電車を地下に改築する形で建設されました。路面電車用の車両を使用していたものの、特徴的なのはニューヨーク州内のインターアーバン路線と接続していた点です。これは日本の地下鉄直通運転や、フランスのRER（パリ近郊の広域鉄道網）の先駆けと言える、画期的な試みでした。

建設に際しては、1900年のルート変更で使用されなくなったエリー運河の跡地を利用。トンネル躯体を埋め込むことで工期とコストを削減しました。これは、未完成に終わったシンシナティ地下鉄の建設でも用いられた手法です。完成した地下鉄は、都心部数マイルのみが地下構造で、残りは河床部分に立体交差の軌道が敷設されるという、珍しい構造となっていました。

1931年、インターアーバン路線の廃止により直通運転は終了。その後は通勤輸送を担い、第二次世界大戦中には4両編成の電車も運行されました。しかし、旅客数の減少や、路線の東側半分を高速道路の接続道路として利用したいという思惑から、1956年に全線廃止という決断に至りました。

貨物輸送への転用と再利用の可能性

RSBは、当初からインターアーバンとの直通運転を想定して建設されたため、貨物輸送にも対応できる構造となっていました。廃止後も西側半分は貨物鉄道の引込み線として活用され、ゼネラルモーターズやガネット社などの貨物輸送を1996年まで支えました。

現在、ロチェスター市ではいくつかの高速鉄道計画が検討されており、その多くが廃止された地下鉄トンネルの再利用を視野に入れています。他にも、地下歩行者空間への転用なども提案されており、RSBの地下トンネルは、新たな都市開発の可能性を秘めていると言えるでしょう。

ロンドン地下鉄の廃止例との比較

地下鉄の廃止は世界的に見ても珍しいケースです。ロンドン地下鉄でも路線再編による廃止はありましたが、それは路線の更新や代替路線の整備を伴うものでした。例えば、ノーザン鉄道の初代始発駅であったキングウィリアムストリート駅は、テムズ河底のトンネル部分の急カーブと勾配が問題となり、開業数年後にトンネルを掘り直して駅を移転しています。また、1930年代には地下鉄運営会社が郊外への路線延伸を積極的に行い、その一部が後に廃止されました。しかし、ロチェスター地下鉄のように、都心部で代替路線の整備を伴わずに廃止された例は、世界的に見ても極めて稀な事例と言えるでしょう。

残された遺産と未来

RSBは短い歴史に終わりを告げましたが、そのユニークな構造と歴史は、現在も人々の関心を集めています。地下鉄トンネルの再利用計画は、過去の遺産を活かし、未来の都市づくりに繋げる可能性を示唆しています。ロチェスターの地下には、新たな物語が刻まれようとしています。

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