ロッテウェルフード

ロッテウェルフード株式会社は、大韓民国の首都ソウル特別市に本拠を置くロッテグループ傘下の主要な食品製造企業です。チューインガムやチョコレートを中心とした製菓事業を柱とし、アイスクリームや健康補助食品など多岐にわたる製品を展開しています。同社は1967年に設立され、ロッテグループにおける食品分野の中核を担っています。

創業から日本での成功

ロッテの事業の源流は、第二次世界大戦終結後の日本に遡ります。創業者の辛格浩（シン・キョクホ、日本名：重光武雄）は1941年に日本へ留学し、早稲田実業学校で学びました。卒業後も日本に留まった彼は、1946年に「ひかり特殊化学研究所」を設立。戦時中に残存した化学薬品を利用して石鹸や化粧品を製造し、事業の基礎を築きました。この初期の成功により得た資金を元に、彼は当時日本でアメリカ兵によって広まり始めていたチューインガムに着目し、1947年にガム製造事業を開始しました。

1948年には従業員10名を加えてロッテを創業。「ロッテ」という社名は、辛格浩が愛読していたゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』のヒロインであるシャルロッテに由来しています。創業当初、ロッテは天然のチクルを原料とした様々なチューインガム（オレンジガム、ロッテガム、カウボーイガム、マーブルガム、野球ガムなど）を次々と市場に投入しました。同社は、製品販売を促進するために積極的な広告戦略を展開し、日本で初めてテレビ番組やスポーツイベント（自社野球チーム、美人コンテストなど）を後援した企業のひとつとなりました。

1950年代半ばには日本の南極地域観測隊を後援し、隊員向けのチューインガムを開発。これが後の1956年に一般消費者向け製品として発売された「クールミントガム」へと繋がります。クールミントガムの特徴的なペンギンパッケージは、日本を代表する消費者ロゴの一つとなりました。また、TBSテレビで放送された音楽番組「ロッテ 歌のアルバム」の提供も、同社の知名度向上に貢献しました。

この時期、ロッテはチューインガムに加えてキャンディー、クッキー、スナックケーキなどの菓子類にも事業を拡大。1960年代初頭までには、明治や森永製菓といった日本の主要な製菓会社と競合する地位を確立しました。ロッテの事業が飛躍的に発展したのは、1960年代のチョコレート市場への参入でした。1964年に発売された「ガーナ」ミルクチョコレートは、スイススタイルのチョコレートを日本人の嗜好に合わせて開発された製品で、大々的なテレビCMキャンペーンによってブランドイメージを確立しました。ガーナチョコレートの成功は、ロッテが後に日本を代表するチョコレートメーカーへと成長する礎となったのです。

韓国への本格進出と国際展開

日本で成功を収めたロッテですが、創業者の辛格浩は母国である韓国との繋がりも大切にしていました。既に1958年には韓国市場向けのチューインガムや菓子、インスタントラーメン（後の農心）の製造工場を設立していましたが、1965年の日韓国交正常化を機に韓国への本格進出を決断。1967年に韓国法人「ロッテ製菓株式会社」を設立しました。

しかし、当時の韓国は軍事政権下にあり、辛格浩は韓国政府との関係で困難に直面します。政府は国防力強化のため軍需産業の育成を目指しており、辛格浩にも軍需産業への参入を求めましたが、彼は製菓事業への悪影響を懸念してこれを拒否しました。この一件は朴正煕大統領の直接介入によって最終的に解決され、辛格浩は軍需産業への投資の代わりに、ロッテグループの経営の中心を韓国に移すことに同意しました。こうしてロッテ製菓は韓国ロッテグループの中核企業となりましたが、1990年代までは日本のロッテが最大の事業規模と市場を維持していました。

1990年代以降、ロッテ製菓はさらなる成長を目指し、国際市場への展開を加速させました。1970年代後半には既にアメリカに子会社を設立し、製造・販売拠点を設けていましたが、1990年代にはアジア市場に注力。1989年にタイ、1993年にインドネシア、1994年に中国（当初は合弁、後に単独事業化）、1995年にフィリピン、1996年にはベトナムと、次々に海外拠点を設立し、製造・販売ネットワークを広げました。

革新的な製品開発と新たな事業

国際展開と並行して、ロッテは製品開発においても革新を追求しました。1996年には、世界初のシュガーレスチョコレートとされる「チョコレートゼロ」を日本で発売。翌1997年には、噛んでも酸を生成しないキシリトールを配合したチューインガムを日本で初めて発売し、虫歯予防効果を謳った製品として大きな成功を収めました。キシリトールを配合した製品ラインナップは2000年代以降も拡充され、2005年には歯磨き機能を付加したガム「ノータイム」も登場しました。

また、2002年には雪印乳業との合弁会社「ロッテスノー」を設立し、冷菓事業を強化。2005年には中国の食品会社を買収するなど、グローバルな製菓グループを目指す戦略を進めました。2008年にはベルギーの高級チョコレートメーカーであるギリアンを買収し、チョコレート事業をさらに拡充しています。さらに、韓国ではハーシーとの合弁事業を通じて製品ラインナップを拡大しています。

創業者の辛格浩は長年にわたりロッテの経営を主導し、家族も経営に加わりました。彼は約60年をかけて、小さなチューインガム工場だったロッテを世界有数の総合食品グループへと育て上げました。2017年10月には、持株会社体制への移行に伴い会社分割が行われ、ロッテ製菓は再編されました。

主な製品分野

ロッテウェルフードは、幅広い製品ポートフォリオを持っています。

製菓: チューインガム（ジューシーフレッシュ、キシリトールなど）、チョコレート（ガーナ、クランキーなど）、ビスケット（チックチョック、マーガレット、コアラのマーチ）、スナック菓子（ペペロ）など、多様な製品を製造・販売しています。これらの製品の多くは、日本人や韓国人が多く住む地域を中心に世界各国で流通しています。
アイスクリーム: 韓国国内のアイスクリーム市場で大きなシェアを占めており、バー、コーン、カップ、ファミリータイプなど様々な形態の製品を提供しています。プレミアムブランド「ナチュール」も展開し、高品質な素材を使用したフレーバーを取り揃えています。
* 健康補助食品: 2018年には健康補助食品ブランド「Health1」を立ち上げ、ビタミン、ミネラル、紅参エキスなど、多岐にわたるサプリメント製品を手がけています。

ロッテウェルフードは、創業以来の革新的な製品開発と積極的な国内外での事業展開を通じて、現在もグローバルな食品企業として成長を続けています。

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