ロドヴィコ2世 (イタリア王)

ロドヴィコ2世：9世紀イタリア王の波乱に満ちた生涯

ロドヴィコ2世（825年-875年）は、フランク王国を揺るがした数々の出来事を経験した、重要な歴史的人物です。彼は、中部フランク王国国王ロタール1世とトゥール伯ユーグの娘エルマンガルドの間に生まれた長男として、825年に誕生しました。幼少期から王位継承問題に直面し、複雑な政治状況の中で権力闘争を繰り広げながら、イタリア王、そして共同皇帝としての地位を築き上げていきます。

帝位継承と権力闘争

839年、ロドヴィコはイタリア王に任命され、ローマで戴冠。その後、850年には共同皇帝の座に就きます。これは、父ロタール1世の意向によるものでしたが、同時に、兄弟たちとの間で王位継承を巡る争いが始まりつつあることを意味していました。855年、ロタール1世の死後、フランク王国は分割され、ロドヴィコはイタリア王国の支配権を相続します。しかし、彼は帝国全体を統治するほどの権力を持つことはできず、イタリア北部の一部のみを支配下に置くこととなりました。カール大帝以来のフランク王国の勢力は既に衰えを見せており、皇帝としての権威は大きく制限されていました。

南イタリアにおけるイスラム軍との戦い

ロドヴィコの治世下、南イタリアはイスラム軍の脅威にさらされました。ベネヴェント侯国での継承争いに介入したイスラム教徒はバーリに勢力を拡大し、イタリア半島への侵攻を繰り返しました。846年にはローマがイスラム軍によって襲撃されるという事態が発生。ロドヴィコは、イタリア全土へのイスラム勢力の進出を阻止するため、長年にわたる戦いを強いられました。847年にはベネヴェントからイスラム教徒を駆逐し、849年にはベネヴェント侯国を分割することで、継承問題を一応解決しますが、それでも南イタリアへのイスラム軍の侵攻は続き、彼はその対処に苦慮しました。871年にバーリを奪還したものの、イスラム軍との戦いは収束せず、東ローマ帝国の協力を得るため、873年には南イタリアにおける東ローマ皇帝バシレイオス1世の宗主権を認めざるを得ない状況に追い込まれます。

領土の再編と継承問題

ロドヴィコの治世下では領土問題も大きな課題でした。863年、末弟シャルルが後継者を残さずに死去すると、その領地であるブルグント南部とプロヴァンスは、ロドヴィコともう一人の弟ロタール2世によって分割されました。ロドヴィコはプロヴァンスを獲得し、イタリア王国に併合しました。しかし、869年にロタール2世が後継者を残さずに死去すると、彼の領地であるロタリンギアは、西フランク王シャルル2世によって奪われてしまいます。このロタリンギアは東フランク王ルートヴィヒ2世も相続権を主張しており、870年のメルセン条約で、ルートヴィヒ2世とシャルル2世の間で分割されました。ロドヴィコ自身はイスラム軍との戦いでイタリアから離れられず、この問題に有効な対応をとることができませんでした。

死と遺産

875年8月12日、ロドヴィコ2世は後継者を残さずにイタリアで死去しました。彼は死の直前に東フランク王ルートヴィヒ2世を後継者として指名していましたが、最終的にイタリア王国とローマ皇帝位は、教皇ヨハネス8世の支持を得た西フランク王シャルル2世が継承することとなりました。ロドヴィコ2世の死は、フランク王国の分裂と、イタリア半島におけるイスラム勢力との抗争という、ヨーロッパ中世史における重要な転換期を象徴する出来事となりました。彼の治世は、権力闘争、宗教的対立、そしてイスラム勢力との戦いといった、中世ヨーロッパ特有の複雑な問題が絡み合った時代を象徴しています。

家族

ロドヴィコ2世は851年に、スポレート公アデルキ1世の娘とされるエンゲルベルガと結婚し、2人の娘をもうけました。
エルマンガルド（イルミンガルド）：プロヴァンス王ボソと結婚
ギーゼラ：ブレシアのサン・サルヴァトーレ女子修道院長

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