ロバート・カルダー

サー・ロバート・カルダー準男爵

サー・ロバート・カルダー準男爵（1745年 7月13日 - 1818年 9月1日）は、18世紀後半から19世紀初頭にかけて活躍したイギリス海軍の提督です。

彼は1745年にスコットランドのエルギンで、第3代カルダー準男爵ジェームス・カルダーとアリス・ヒューズの間に生まれました。地元のグラマースクールで教育を受けた後、1759年、14歳で海軍の道に進みます。士官候補生時代には、スペイン船の拿捕により相当な賞金を得る経験をし、1762年5月21日には海尉に昇進しました。

海尉としては、ジョージ・フォークナー艦長指揮下の64門艦「エセックス」に配属されます。その後の昇進は緩やかで、勅任艦長に任じられたのは1780年のことでした。この間、1779年にアメリア・ミッチェルと結婚しましたが、二人の間に子供はできませんでした。

艦長としては、リチャード・ケンペンフェルト提督のもとでフリゲート艦「ダイアナ」を指揮し、様々な任務をこなしましたが、目覚ましい功績を挙げる機会には恵まれませんでした。

転機が訪れたのは1796年です。彼はジョン・ジャーヴィス提督率いる艦隊で、旗艦「ヴィクトリー」の主席艦長に任命され、翌1797年2月14日に行われたサン・ビセンテ岬の海戦に参加しました。この歴史的な勝利の後、カルダーは戦勝の知らせを本国へ急報する重要な役割を担いました。帰国後、1797年3月3日にジョージ3世によりナイトに叙せられ、議会からも褒賞を受けました。さらに1798年8月22日には、初代サウスウィックのカルダー準男爵に叙爵され、その功績が認められました。

昇進を重ね、1799年にはリア・アドミラル（少将）に、1804年にはヴァイス・アドミラル（中将）に進みました。中将として、彼はフランスからエジプトへ物資を輸送しようとするフランス艦隊を追撃する任務に就きましたが、この追撃は期待された成果を上げられませんでした。第三次対仏大同盟の期間中、カルダーはナポレオンによるイギリス侵攻の準備が進められていたロシュフォール港とフェロル港の封鎖艦隊を指揮しました。数において不利な状況ながらも封鎖を維持し、敵艦隊の海上への脱出を阻止することに成功しました。

ナポレオンがイギリス侵攻の序章としてフェロル港の封鎖を解こうとしている情報が入ると、海軍はチャールズ・スティリング中将率いる部隊をカルダー艦隊に合流させ、ブレストへの出撃を目指すフランス・スペイン連合艦隊の迎撃を命じました。敵艦隊の接近は霧に隠されていましたが、ついに1805年7月22日に視界に捉えられます。

イギリス艦隊15隻に対し、連合艦隊は20隻と数で勝っていましたが、カルダーは指揮下の艦隊に対して戦闘を命じました。これがフィニステレ岬の海戦です。イギリス艦隊は死者39名、負傷者159名の損害を出しつつも、敵艦2隻を拿捕することに成功しました。一方、連合艦隊は死者158名、負傷者320名の損害を被りました。約4時間後、夜の訪れとともにカルダーは戦闘の中断を命じました。その後2日間、両艦隊は近距離に留まりましたが、さらなる交戦は起きませんでした。カルダーは得た勝利を守ることを優先し、連合艦隊の司令官ヴィルヌーヴはこれ以上の損害を避けたかったためと考えられています。

この戦闘の結果、ヴィルヌーヴ提督はブレストへ向かうことを断念し、7月24日にこの海域を離れてフェロルへ撤退、さらにカディスへと退きました。これにより、アイルランドへの兵員上陸、ブレスト艦隊との合流、海峡艦隊の誘引といったヴィルヌーヴの目標は全て失敗に終わりました。ブーローニュで待機していたナポレオンのイギリス遠征軍は無駄となり、イギリス侵攻計画は白紙に戻されました。

しかし、イギリス国内では、カルダーの行動は完全な勝利を逃したとして批判的に受け止められました。

批判が強まったため、カルダーは軍法会議にかけられることになりました。ネルソン提督は、差し迫った戦闘状況にもかかわらず、カルダーとその旗艦である98門艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の帰国を許可しました。カルダーは8月上旬にイギリスに到着し、トラファルガー沖の決戦には立ち会えませんでした。軍法会議は12月23日に開かれ、彼は戦闘において全力を尽くさず、臆病で不適切な行動をとったとして、厳しい譴責処分を受けました。これ以降、彼は海上での指揮を執ることはなくなりました。

しかし、彼のキャリアが完全に終わったわけではありませんでした。キャリアの進展としては自然な流れで、1810年には提督へと昇進し、同年には海軍司令長官にも任じられました。そして、それまでの功績が改めて認められ、また自身に向けられた批判が収束したことから、1815年にはバス勲章を授与されました。

サー・ロバート・カルダー準男爵は、1818年 9月1日、ハンプシャー州ビショップスウォルサム近郊のホルトでその生涯を閉じました。彼のキャリアは、輝かしい栄光と厳しい批判、そして晩年の名誉回復という複雑な様相を呈しています。

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