ロバート・サーバー

ロバート・サーバー：マンハッタン計画の中核を担った理論物理学者

ロバート・サーバー(1909年-1997年)は、20世紀物理学史に名を刻むアメリカ合衆国の理論物理学者です。彼の名は、マンハッタン計画における貢献、特に原子爆弾開発における重要な役割抜きには語れません。

学術的キャリアとマンハッタン計画への参加

サーバーは、リーハイ大学で物理学工学の学士号、ウィスコンシン大学マディソン校で博士号を取得した後、カリフォルニア大学バークレー校でオッペンハイマーの下で研究活動を行いました。オッペンハイマーの活気に満ちた研究グループの一員として、サーバーは着実に頭角を現していきます。1941年、彼は運命的な決断を下します。それは、ロスアラモス国立研究所におけるマンハッタン計画への参加でした。

ロスアラモスでは、サーバーはオッペンハイマーの信頼厚い協力者として、原子爆弾開発の中枢を担いました。彼の専門知識は、爆弾設計の様々な側面に影響を与えました。特に、爆弾の爆発における衝撃波の理論的研究（「Serber shock wave」として知られる）は画期的でした。また、ロバート・ウィルソンと共に臨界計算手法を開発し、爆縮レンズ開発においても重要な貢献をしました。爆縮レンズの設計には、半減期が短い放射性同位体ランタン140を用いた実験（RaLa実験）の提案も含まれており、これはブルーノ・ロッシらによって実行され成功を収めました。さらに、彼は「ロスアラモス入門書」という、核兵器開発の基礎を解説した重要な講義録を執筆しました。この講義録は、後の核物理学研究者にとって重要な参考文献となりました。

トリニティ実験と長崎

1945年7月16日、ニューメキシコ州で人類初の核実験であるトリニティ実験が行われました。サーバーは、安全な距離からこの歴史的瞬間を目撃し、その詳細な記録を残しています。実験の成功後、彼はプロジェクト・アルバータの一員としてテニアン島に移動し、原爆の最終組み立てにも関わりました。

8月9日には、長崎への原爆投下を記録するため、B-29爆撃機への搭乗が予定されていましたが、パラシュートを携帯していなかったため搭乗を断念。代わりに地上から無線でカメラ操作を指示し、貴重な記録を残しました。戦争終結後、彼は広島と長崎を訪れ、最初の科学者グループの一員として、残留放射能や被爆状況の調査を行いました。長崎では、長崎医科大学（現長崎大学医学部）の調来助医師と原爆症について議論を交わしました。被爆地での調査活動は、戦後の原子爆弾被害に関する理解を深める上で重要な役割を果たしました。サーバーは、眼鏡をかけた男性として、被爆地で放射能測定を行っている写真にも残されています。

戦後と晩年

戦後、サーバーはバークレー、コロンビア大学で教授職に就き、コロンビア大学物理学部長も務めました。理論物理学者としての彼の業績は高く評価され、核物理学に関する講義録『Serber Says』は広く読まれました。彼は1997年、脳腫瘍による合併症で亡くなりました。

功績と記憶

サーバーは、全米科学アカデミーやアメリカ芸術科学アカデミー会員に選出されるなど、数々の栄誉に輝きました。彼の功績は、数々の書籍や論文、そして2023年に公開された映画『オッペンハイマー』においても描かれています。同映画では、マイケル・アンガラノがサーバーを演じました。彼の残した著作には、『平和、戦争と平和―先端核科学者の回顧録』や『ロスアラモス・プライマー―開示教本「原子爆弾製造原理入門」』などがあります。これらの著作は、彼の生涯と業績を理解する上で貴重な資料となっています。サーバーの貢献は、現代物理学、そして世界の歴史に大きな足跡を残しました。彼の研究や活動は、未来の科学技術の発展に重要な示唆を与え続けています。

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