ロバート・フォーチュン

ロバート・フォーチュン（Robert Fortune、1812年 9月16日 - 1880年 4月13日）は、スコットランド出身の植物学者、プラントハンター、そして商人として、19世紀に活躍しました。彼の功績は、植物学の分野だけでなく、世界的な貿易にも大きな影響を与えました。特に、中国からインドへチャノキを導入したことは、その後の紅茶文化の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと初期のキャリア

フォーチュンは、スコットランドのベリックシャーの小さな村で生まれました。エディンバラ植物園で庭師として働き始め、その後、ロンドン園芸協会付属植物園で温室係を務めました。この時期に植物学への関心を深め、後のプラントハンターとしての活動の基礎を築きました。

中国での活動

1842年の南京条約によって香港がイギリスに割譲され、中国の開港地が増えると、園芸協会は中国産植物に関心を抱き、フォーチュンをプラントハンターとして派遣しました。1843年7月に香港に到着したフォーチュンは、緑茶と紅茶が同じチャノキから作られることを発見し、当時の定説を覆しました。また、外国人の立ち入りが制限されていたにもかかわらず、中国人に扮して内陸部まで足を運び、多くの植物を収集しました。1846年には、レンギョウ属、タニウツギ属、スイカズラ属など、約250種もの植物とともにイギリスへ帰国しました。この輸送には、ウォードの箱が使用され、植物の安全な輸送に貢献しました。

インドでの茶の導入

1846年、フォーチュンは東インド会社の社員として、茶のインドへの導入という重要な任務を担い、再び中国へ派遣されました。彼は中国内陸部を旅し、茶の苗や種子をウォードの箱に入れて運び出すことに成功しました。この功績により、インドでの茶の生産が飛躍的に増大しました。フォーチュンはカルカッタで茶の栽培や製造の指導を行い、インドの茶産業の発展に大きく貢献しました。

再び中国へ、そして日本へ

フォーチュンはその後も中国へ派遣され、シャクナゲの交配に重要な種となるRhododendron fortuneiを発見しました。また、アメリカ政府の依頼でチャノキを採集するため中国を訪れている際に日本の開港を知り、日本へ渡ることを決意します。

フォーチュンは長崎、横浜を訪れ、日本の植物や文化に触れました。彼は特に、豊顕寺で見たコウヤマキに感動し、針葉樹の種子を入手しようと試みました。また、植木村では、サボテンやアロエなどの外来植物が導入されていることに驚き、菊やアオキなどの植物を入手しました。特にアオキは、当時ヨーロッパに雌株しかなかったため、フォーチュンが雄株を持ち帰ったことで、ヨーロッパでも実をつけるようになったという逸話があります。

日本への賛辞

フォーチュンは、著書『幕末日本探訪記―江戸と北京』の中で、「日本人の国民性の著しい特色は、庶民でも生来の花好きであることだ。花を愛する国民性が、人間の文化的レベルの高さを証明する物であるとすれば、日本の庶民は我が国の庶民と比べると、ずっと勝っているとみえる」と述べています。この言葉は、彼の日本への深い感銘と尊敬を表しています。

フォーチュンにちなむ献名

フォーチュンが発見した植物の中には、彼にちなんで献名されたものが多くあります。キンカン属の学名Fortunella、シュロの学名Trachycarpus fortunei、バラの品種Fortune's Double Yellow、ツルマサキの学名Euonymus fortuneiなどがその例です。これらの名前は、フォーチュンの植物学への貢献を永遠に記憶するものです。

ロバート・フォーチュンは、植物学者、プラントハンター、そして商人として、その生涯を通じて世界各地の植物を探求し、多くの植物を人々に届けました。彼の活動は、単に植物の収集にとどまらず、文化や貿易の発展にも大きく貢献したと言えるでしょう。

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