ロビン・ハード

ロビン・ハード：レーシング界の巨匠とその足跡

ロビン・ハード (1939年3月23日-2019年6月4日) は、イギリスを代表するレーシングカーエンジニア、デザイナー、そして実業家でした。その名を世界に知らしめたのは、彼が共同設立者として名を連ねるマーチ・エンジニアリングです。ランカシャー州出身のハードは、オックスフォードのセント・ピーターズ・カレッジで学び、その後RAE-コンコルド・プロジェクトに携わるなど、エンジニアとしてのキャリアを順調に歩みます。RAEの支局である英国立ガスタービン施設(NGTE)勤務中には、後にマーチの仲間となるゴードン・コパックと出会い、共にマクラーレンでM2B、M4B、M5A、M7Aといったマシン設計に貢献しました。その後コスワースに移籍し、4WDF1カーの設計にも携わっています。

マーチ・エンジニアリングの設立とF1への挑戦

1969年、ハードはマックス・モズレー、アラン・リース、グレアム・クーカらと共にマーチ・エンジニアリングを設立。その名の由来は、彼らのイニシャルにちなんでいます。設立前夜には、F3カーであるマーチ・693を完成させ、フランク・ウィリアムズと共にブラバムから購入したマシンを用いたF1初参戦をサポートするなど、その活動は多岐に渡りました。マーチは1970年から1992年にかけて、F1グランプリに参戦。207回のレースを戦い抜き、4回のポールポジション獲得と3勝という輝かしい成績を収めました。

1981年には、RAMレーシングのジョン・マクドナルドと共同でマーチ・グランプリを設立し、F1世界選手権に参戦。このプロジェクトには1年間携わりましたが、その後のマーチはF2やインディカーレースでも成功を収め、特に1983年から1987年にかけてインディ500で5年連続優勝という偉業を達成しました。この成功を背景に、1986年にはロンドン証券取引所に上場を果たします。

F1への復帰とマーチ・グループからの独立

1986年、ハードはF1への復帰計画に着手。イヴァン・カペリをドライバーに、イアン・フィリップスをチームマネージャーに迎え入れ、日本の不動産企業レイトンハウスからのスポンサーシップを獲得。1987年からレイトンハウス・マーチとしてF1に復帰しました。しかし、レイトンハウスは段階的にマーチの株式を取得し、1989年にはマーチ・レーシングの完全子会社化を果たします。これによりハードはマーチ・グループから離れることとなり、ビスターにデザインオフィスであるロビン・ハード社を設立しました。以降、フォメット、ベンチュリーuk、ラルースuk、GenTech (UK)といった社名で、数々のクライアントの依頼に応えていきます。

多彩な活動と晩年

レーシング界への貢献にとどまらず、ハードは1995年にはオックスフォード・ユナイテッドFCを買収し、1998年まで会長を務めるなど、幅広い活動を行いました。1999年には、元オニクス代表のマイク・アールと共に新しいF1チーム設立を目指した計画もあったと言われています。さらにマーチ・インディ・インターナショナルというインディレーシングリーグチームも結成しました。

2019年6月5日、80歳でその生涯を終えました。ハードの功績は、数々のレーシングカーの設計開発にとどまらず、マーチ・エンジニアリングという名門チームの設立、そしてF1、インディ500といったトップカテゴリーでの成功に大きく貢献した点にあります。彼の残した技術的遺産と情熱は、これからもレーシング界に大きな影響を与え続けるでしょう。

もう一度検索