ロビン・ミルフォード

ロビン・ミルフォード（Robin Milford）は、1903年1月22日に生まれ、1959年12月29日にその生涯を終えたイギリスの作曲家です。オックスフォードで育った彼は、早くから音楽の才能を示しました。

1916年に名門ラグビー校に入学し、ピアノやフルート、そして音楽理論に深い関心を持ちます。さらに音楽の道を極めるため、1921年から1926年にかけて王立音楽大学で学びました。ここで彼は、当時のイギリス音楽界を牽引していたグスターヴ・ホルストとレイフ・ヴォーン・ウィリアムズという二人の巨匠に作曲を師事するという貴重な経験を得ます。また、レジナルド・オーウェン・モリスからは対位法を学び、作曲家としての基礎を固めました。学生時代を経て、彼は同じく作曲家であるジェラルド・フィンジと1929年に出会い、この出会いが終生の深い友情へと発展することになります。

作曲活動を始めて間もない頃、ミルフォードはいくつかの成功を収めます。彼の作品「二重フーガ」はカーネギー賞を受賞し、師であるヴォーン・ウィリアムズ自身の指揮によりロンドン交響楽団によって演奏されるという栄誉に恵まれました。1937年には「合奏協奏曲」がマルコム・サージェントの指揮で演奏され、翌1938年には「ヴァイオリン協奏曲」がBBCで放送されるなど、順調なキャリアを歩み始めているかに見えました。

しかし、第二次世界大戦の勃発が彼の人生に暗い影を落とします。軍への志願入隊を試みますが、わずか一週間で精神的な不調に陥り、軍を離れざるを得ませんでした。戦禍を避けるため、彼と家族はガーンジー島へと疎開しますが、1940年に母を亡くしたことで、彼のうつ病はさらに悪化します。作曲と教育活動を再開するためイギリス本土に戻った後も、悲劇は続きました。最愛の5歳の息子を交通事故で失うという衝撃的な出来事により、彼は深い絶望の淵に立たされ、自ら命を絶とうと試みます。幸いにも一命はとりとめることができましたが、この一連の出来事は彼の心に癒えない傷を残しました。

回復期を経て、1946年からはバドミントン校で再び教鞭を執る傍ら、精力的に作曲活動を再開します。困難な時期を乗り越え、再び音楽と向き合う力を取り戻した彼は、多くの作品を生み出しました。1955年には、チェルトナム音楽祭でジョン・バルビローリの指揮により「祝典組曲」が演奏されるなど、公の場での演奏機会も得ています。

ミルフォードは、公私にわたりジェラルド・フィンジとレイフ・ヴォーン・ウィリアムズという二人の重要な人物から、精神的・物質的な両面で手厚い支援を受けていました。彼らに支えられながら創作活動を続けていましたが、1956年のフィンジの死、そして1958年のヴォーン・ウィリアムズの死は、彼にとって計り知れないほど大きな衝撃となりました。長年にわたり精神的な支柱であった彼らを相次いで失ったことは、彼の孤独感を深め、再び精神的なバランスを崩す原因となった可能性があります。

彼の音楽的なスタイルは、師であるホルストやヴォーン・ウィリアムズから強い影響を受けていました。穏やかで旋律的な作風は、当時のイギリス音楽の伝統に根差したものでしたが、次第に主流となりつつあった現代音楽の潮流からは離れていました。このため、彼の作品は同時代においては正当な評価を受ける機会が少なく、録音された作品もごくわずかに留まっています。しかし、近年ではその静謐で叙情的な音楽が見直され始めており、「月明かりで釣り」といった作品を含む一部の楽曲は現在でも聴くことができます。度重なる悲劇に見舞われた人生の末、ミルフォードは支援者たちの死から一年後の1959年、アスピリンを過剰摂取し、自ら人生の幕を閉じました。彼の生涯は、才能に恵まれながらも私生活の苦難と時代の潮流の中で評価を得られなかった作曲家の悲劇的な一例として記憶されています。

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