ロブスター (映画)

ロブスター：動物に変身する運命と、禁断の恋

『ロブスター』（原題:The Lobster）は、2015年に公開されたギリシャ、フランス、アイルランド、オランダ、イギリス合作のSF恋愛映画です。ヨルゴス・ランティモス監督による、英語作品としては初の作品であり、第68回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞しています。近未来を舞台に、独身者に課せられた残酷なルールと、そこから逃れようとする人々の姿を描いた、独特の世界観を持つ作品です。

物語：45日間の期限と、森のルール

舞台となるのは、結婚し、子孫を残すことが義務付けられた近未来社会。主人公デイヴィッドは、妻に捨てられたことで、街のルールに従い、変わり種のホテルへと送られます。このホテルでは、45日以内に配偶者を見つけなければ、動物に変えられてしまうという、衝撃的な運命が待っています。デイヴィッドは、ホテルの支配人に「なりたい動物」を問われ、「ロブスター」と答えます。

ホテル内では、他の参加者と共に配偶者探しが始まりますが、デイヴィッドはなかなかうまくいきません。彼は絶望の果てに、独身者たちが暮らす森へと逃げ込みます。森には、独身者たちのリーダーが決めた「恋愛禁止」という、皮肉なルールが存在していました。しかし、デイヴィッドは森で出会った「近眼の女」と恋に落ち、森のルールを破ります。

キャスト：個性豊かな俳優陣

本作には、個性豊かな俳優陣が出演しています。主人公デイヴィッドを演じるのは、コリン・ファレル。彼の演技は、この異質な世界観に深みを与えています。「近眼の女」役にはレイチェル・ワイズ。他にも、レア・セドゥ、アリアーヌ・ラベド、ジョン・C・ライリー、ベン・ウィショーなど、実力派俳優たちが脇を固めています。

製作：アイルランドでの撮影と、役作り

主要撮影は、2014年3月24日から5月9日にかけて、アイルランドのダブリンとケリー県で行われました。コリン・ファレルは役作りのために体重を増やすなど、作品への強いこだわりを見せています。当初はジェイソン・クラークが主人公役にキャスティングされていましたが、スケジュールの都合で降板、コリン・ファレルが代役を務めることになりました。

配給：紆余曲折を経ての公開

2014年にはソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ、南米での配給権を獲得しました。2015年にはアルケミー社がアメリカでの配給権を獲得し、2016年3月11日の公開が決定していました。しかし、アルケミー社の財政難により、A24が配給権を引き継ぎ、公開日は2016年5月13日に変更となりました。

批評と評価：高い評価を獲得

映画批評集積サイトRotten Tomatoesでは、55件のレビューに基づき、91％という高い満足度と7.6/10という平均スコアを獲得しました。Metacriticでも80/100という高評価を得ています。批評家からは、「野心的でぞっとするほど奇妙であり、間違いなく見るたびに好きになっていく作品だ」と絶賛されました。

まとめ：独特な世界観と、人間の業

『ロブスター』は、奇想天外な設定と、独特の世界観、そして個性的なキャラクターたちが織りなす、他に類を見ない作品です。一見、風変わりな物語に見えますが、その根底には、人間の孤独や、愛と社会の矛盾といった普遍的なテーマが潜んでいます。人間の業を、ユーモラスでありながら鋭くえぐり出す、ヨルゴス・ランティモスの才能が光る、傑作と言えるでしょう。

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