ロムルスとレムス (ルーベンス)

ピーテル・パウル・ルーベンス作「ロムルスとレムス」

ピーテル・パウル・ルーベンスによって描かれた「ロムルスとレムス」は、油彩で描かれたバロック様式の絵画作品です。制作年は1612年から1613年頃と推定され、工房の複製が1614年には存在していたことが確認されています。

この作品は、ローマ建国神話における重要な場面を描いています。アルバ・ロンガの王位を簒奪したアムリウスは、復讐を恐れてヌミトルの娘レア・シルウィアをウェスタの巫女としますが、彼女は軍神マルスとの間に双子の兄弟ロムルスとレムスを身ごもります。アムリウスは彼らをテベレ川に捨てるよう命じますが、兄弟は奇跡的に生き残り、雌狼とキツツキに育てられます。この双子の兄弟が、後にローマを建国することになります。

画面構成

絵画には、羊飼いのファウストゥルスが、川辺のイチジクの木の下で双子を発見する場面が描かれています。一人の子供は雌狼の乳を吸い、もう一人は両手を上げて、キツツキを見つめています。キツツキは、三粒のサクランボを子供のもとに運んでいます。画面右上にも二羽のキツツキが描かれています。左側では、テベレ川の神が水が湧き出る瓶にもたれかかり、その後ろには川の水の源を象徴するニンフが描かれています。これらの神々は、人間には不可視の存在として描かれ、物語の進行には直接関与していません。

ルーベンスは、この作品で雌狼と双子の兄弟を描くにあたり、当時ヴァチカン宮殿にあった古代彫刻「テベレ川の彫像とロムルスとレムス」の雌狼と双子のモチーフを参考にしました。この彫刻のデッサンは、ルーベンスがイタリア滞在中に制作し、ミラノのアンブロジアーナ図書館に所蔵されています。ルーベンスは、彫刻で欠損していた雌狼の耳や口、双子の頭部や腕を補完し、子供たちの位置を左右反転させ、大きさを誇張して描きました。

背景描写と制作背景

背景の風景描写は、風景画家のヤン・ウィルデンスによって描かれたという説が有力です。この作品は、ルーベンスと親交があったニコラ・グィディ・ディ・バーニョ枢機卿が発注した可能性が高く、1641年には彼の所蔵であったことが記録されています。

ルーベンスは、古代のモチーフを自身の芸術的な解釈で再構築し、バロック的なダイナミズムと豊かな色彩で表現しました。この作品は、神話的な物語を生き生きと描き出し、観る者に強い印象を与えます。

現在、この絵画はローマのカピトリーノ美術館に所蔵されており、ルーベンスの卓越した画力を示す重要な作品として、多くの人々に鑑賞されています。

参考資料

『ルーベンス　栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』、Bunkamuraザ・ミュージアム、毎日新聞社、TBS、2013年刊行
カピトリーノ美術館公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『ロムルスとレムス』 （英語）
* Web Gallery of Artサイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『ロムルスとレムス』 （英語）

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