ロンドン・チャーターハウス

ロンドン・チャーターハウス：歴史と変遷を刻む修道院跡

ロンドン北西部、賑やかな街並みのなかに静かに佇むチャーターハウスは、中世イングランドの歴史を凝縮した、由緒ある建造物です。かつてはカルトジオ会修道院として、静寂な祈りの場でしたが、激動の時代を経て、邸宅、学校、そして現代では高齢者住宅へと、その姿を変えてきました。

カルトジオ会修道院の設立とペストの影

1371年、マニー男爵ウォルターによって設立されたこの修道院は、1348年のペスト大流行で多くの犠牲者が埋葬された地に近い場所に建てられました。25人の修道士がそれぞれに与えられた私室と庭で生活し、静謐な日々を送っていたと伝えられています。著名な人文主義者トマス・モアも、精神的な安寧を求めてこの修道院を訪れた記録が残っています。チャーターハウスという名称は、カルトジオ会の母体修道院であるフランスのグランド・シャルトルーズに由来しています。

修道院解散と殉教者たち

16世紀、イングランド宗教改革による修道院解散令は、チャーターハウスをも襲いました。解散に抵抗した修道士たちは、過酷な運命を辿ります。院長ジョン・ホフトンは処刑され、他の修道士たちも獄死や処刑という悲劇に見舞われました。彼らの殉教は、カトリック教会の歴史に深く刻まれています。

転換期と新たな役割

修道院解散後、チャーターハウスは貴族の邸宅として転用されました。その後、17世紀には、石炭貿易で巨万の富を築いたトーマス・サットンがこれを買い取り、少年のための学校と高齢者のための病院を設立しました。これが、名門パブリック・スクールであるチャーターハウス校の起源であり、現在も続くチャーターハウスの社会貢献活動の始まりでもあります。

現代のチャーターハウス

1872年、チャーターハウス校はサリー州に移転しましたが、修道院跡地はその後も様々な用途に利用され続けました。第二次世界大戦中の空襲で被害を受けながらも修復され、中世の建築様式や16世紀の織物など、歴史的建造物としての価値を今に伝えています。

現在、チャーターハウスは主に40人の高齢者住宅として機能しており、裕福な退職者たちが暮らしています。一般の見学はガイドツアーのみが許可されており、歴史的建造物としての保存と、現代社会における新たな役割を両立させています。荘厳な雰囲気と歴史の重みに包まれたチャーターハウスは、ロンドン観光において、歴史と文化に触れられる貴重なスポットと言えるでしょう。

アクセス

最寄りの駅は、ロンドン地下鉄とナショナル・レールが乗り入れているバービカン駅とファリンドン駅です。

もう一度検索