ロンドン交通局

ロンドン交通局 (TfL) の概要

ロンドン交通局（TfL）は、イギリス・ロンドンの公共交通機関を統括する地方行政機関です。ロンドン地下鉄（通称「チューブ」）、バス、ドックランズ・ライト・レイルウェイ (DLR)、トラム、河川交通、さらには道路網や自転車利用インフラまで、ロンドン市内の多岐にわたる交通手段を管理・運営しています。ナショナル・レールの一部路線を除き、ロンドン市内を運行するほとんどの公共交通機関はTfLの管轄下にあります。TfLの役割は、安全で効率的な公共交通システムの提供と、ロンドン全体の交通政策の実行です。

TfLの組織と運営

TfLは、ロンドン市長によって任命された役員会によって運営されています。市長は役員会の議長を兼任し、TfLコミッショナーが組織全体の指揮を執ります。TfLは、大きく分けて地下鉄、地上交通、その他いくつかの部門に分かれており、それぞれが異なる交通手段やインフラの管理を担っています。

主な部門と業務内容

ロンドン地下鉄: チューブと呼ばれる地下鉄ネットワークの運営と、民間企業に委託された保守管理の監督。路線はさらにいくつかの下部機関に分けられ、効率的な運営を目指しています。エリザベス線の運営も含まれ、国際的な企業との契約により運行されています。
ロンドン・レール: ロンドン・オーバーグラウンドやDLRなど、地上を走る鉄道の運行管理と、ナショナル・レールとの連携調整を行います。
地上交通: ロンドンバス、ロンドン・ダイアル・ア・ライド（障害者向け乗合バス）、ロンドン・リバー・サービス（テムズ川旅客船）、道路網管理など、地上交通全般を管轄します。
その他: ロンドンタクシーやハイヤーの認可を行う公共車両事務所、自転車利用促進のためのサイクリングセンター、交通安全啓発、交通違反取り締まりなど、多様な業務を展開しています。

TfLの歴史

TfLは1999年のグレーター・ロンドン・オーソリティー法に基づき設立されました。前身であるロンドン地域交通局を引き継ぎ、2000年に正式に発足。ロンドン地下鉄の運営は、官民パートナーシップ契約の締結を待って2003年まで延期されました。タクシーの管理は、以前は警察が行っていましたが、TfL発足とともに移管されました。TfLおよびその前身組織の業務記録は、ロンドン交通関係文書局とロンドン文書保管局に保管されています。

料金システムと交通カード

TfLが運営する交通機関は、それぞれ独自の料金システムを持っています。しかし、バスとトラム、地下鉄とDLRのチケットはそれぞれ共通で利用可能です。さらに、利用期間や利用可能な時間帯が異なるトラベルカードや、非接触型ICカードであるオイスターカードが導入され、利用者の利便性を高めています。オイスターカードはプリペイド式と定期券機能付きがあり、ナショナル・レールの一部路線でも利用可能です。

その他の取り組み

TfLは、乗客の利便性向上のため、様々な取り組みを行っています。代表的なものとして、ウェブサイト上で公共交通機関の経路検索が可能な「ジャーニー・プランナー」の提供があります。また、2008年には、公共交通機関内での飲酒を禁止する条例を施行し、安全と快適性の向上を目指しています。2005年のロンドン同時爆破事件では、多くのTfL職員が救助活動や復旧作業に貢献し、その功績が認められています。さらに、ロンドン交通博物館を運営し、ロンドンの交通の歴史と文化遺産を後世に伝えています。

まとめ

TfLは、ロンドンの公共交通システムを支える重要な機関であり、多様な交通手段の運営、交通政策の実行、安全性の確保など、幅広い役割を担っています。その歴史、組織、料金システム、そして様々な取り組みは、現代都市の交通運営における模範的な事例と言えるでしょう。継続的な改善と進化によって、ロンドン市民の生活の質向上に貢献し続けています。

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