ロンドン動物園ペンギンプール

ロンドン動物園ペンギンプール：近代建築とペンギンの歴史

ロンドン動物園のペンギンプールは、1930年代、バーソルド・リュベトキンとオヴ・アラップによって設計・建設された、ペンギン展示施設です。楕円形のプールの上に、2本の螺旋状のスロープが交差する独特の構造が特徴で、鉄筋コンクリート建築の可能性を大きく示した、歴史的に重要な建造物として知られています。

ペンギンの飼育の歴史：動物園と共に歩む

ロンドン動物園でのペンギンの飼育は、1870年代にまで遡ります。当初は他の水鳥と同様の池で飼育されていましたが、その後、水族館内の大型水槽やアシカプールなどで飼育されるようになりました。しかし、アシカプールではペンギンがアシカに襲われるという悲しい出来事があり、新たな展示施設の必要性が認識されました。

ペンギンプールの建設とその後：近代建築の傑作

1934年（諸説あり）、リュベトキンとアラップの手によって、ペンギンプールが建設されました。これは、当時まだ新しい素材であった鉄筋コンクリートを駆使した、画期的な建築でした。ねじれた薄いスロープという大胆な構造は、高い技術力と創造性を示すものであり、建築史の教科書にも掲載されています。プールはケープペンギンやフンボルトペンギンの展示に使われ、1987年には修復工事が行われました。

しかし、2004年、ロンドン動物園はペンギンの展示を中止しました。その理由は、コンクリートの上を歩くことでペンギンに関節痛が生じる可能性、プールの水深がペンギンの潜水行動に適さないこと、ケープペンギンの求愛行動である巣穴掘りができないことなどが挙げられています。

その後、ペンギンたちはより自然に近い環境を再現した新しい施設に移され、元のプールは空の状態のまま保存されることになりました。プールには一時的にヨウスコウアリゲーターが展示されましたが、20世紀協会は、その美的資質を損なうものとして批判しました。

構造と評価：建築史に残る遺産

ペンギンプールは、その美しい造形と、当時の建築技術の革新性を示すものとして、高く評価されています。楕円形のプールと螺旋状のスロープは、見る者を魅了する独特の景観を作り出しています。陸上部は白く塗られていますが、これはコンクリートの重苦しさを軽減する効果があると同時に、ペンギンを雪と氷のイメージと結び付ける意図もあったと指摘されています。

このペンギンプールは、イギリス指定建造物のグレードIに登録され、歴史的建造物として保護されています。現在、水のみが満たされた状態のまま、近代建築の傑作として、そしてペンギンたちの歴史を語る重要な建造物として、人々にその姿を伝えています。

まとめ：進化する動物園と建築の調和

ロンドン動物園ペンギンプールは、動物園における動物の飼育方法や、建築技術の進化の歴史を象徴する建造物です。ペンギンたちの福祉と、歴史的建造物の保存という、相反する課題への取り組みが、現代の動物園運営の課題を示唆しています。このプールの歴史は、動物愛護と建築史の両面から、私たちに多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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