ローソク岩

北海道余市郡余市町、日本海沖合約550メートルに位置するローソク岩は、その名の通りローソクのような独特の形状を持つ無人島です。積丹半島の断崖が続く海岸線に点在する数々の奇岩の一つとして知られ、周辺の海岸線とともにニセコ積丹小樽海岸国定公園の一部に指定されています。

この岩は海面から約45メートルを超える高さで天に向かって伸びるかのような、細く尖った姿が特徴で、その岩質はハイアロクラスタイトと考えられています。かつてはより太く丸みを帯びた姿をしていましたが、1940年8月2日の積丹半島沖地震による津波で大きく姿を変え、現在の半分ほどに割れたといわれています。さらに2016年にも先端の一部が欠け、以前より鋭角な形状となりました。

その独特の姿は古くから人々の目を引き、積丹半島、特に余市町のシンボル的な存在として、また重要な観光資源の一つとして親しまれています。岩の上には小さな神社があり、かつては「カムイ・イカシ（男神）」として崇められ、女性がこの岩に近づくことは、不漁を招くという信仰から避けられていました。岩の周辺海域はかつて「千石場所」と称され、ニシン漁の豊かな漁場として栄えた歴史を持っています。近隣には、犬が沖に向かって遠吠えしているように見える「セタカムイ岩」などもあり、この一帯の奇岩群は那須火山帯の活動によって形成されたと考えられています。

ローソク岩という特徴的な名前の由来については、いくつかの説が伝わっています。現在の細長い形から連想されたのではなく、岩が津波で割れる前の丸かった時代に由来すると考えられています。一つは、ニシンの大群の鱗が岩に付着してきらめき、まるでローソクのように光って見えたためという説。もう一つは、ニシンを追って集まったカモメの大群が岩にびっしりと糞をし、その糞に含まれるリン成分が夜間にぼんやりと発光したためという説などが語り継がれています。

この岩には、ニシン漁で栄えた約500年前の伝説も残されています。海の女神から兜と剣を授かった若い漁師が、魔物退治のために海へ出かけたまま戻らず、その際に海に沈んだ兜と剣が岩となって海面に姿を現した、という物語です。

ローソク岩は、見る角度によって様々な表情を見せますが、国道229号線の新ワッカケトンネル開通後に設置された眺望スペース付きの駐車帯からは、その特徴的な姿をゆっくりと眺めることができます。なお、「ローソク岩」や「ロウソク岩」、「蝋燭岩」といった同名の奇岩は、北海道内をはじめ、岩手県、東京都（小笠原）、島根県、鹿児島県など日本各地に存在しますが、余市町のローソク岩は特にそのユニークな形状と歴史、伝説から広く知られています。

もう一度検索