ローター・バウムガルテン

ローター・バウムガルテン（Lothar Baumgarten、1944年 10月5日 - 2018年 12月3日）は、ドイツを代表するコンセプチュアル・アーティストです。ニューヨークとベルリンを主な活動拠点とし、インスタレーション、映像、写真、彫刻、サウンド、ドローイング、書籍、サイトスペシフィック作品など、極めて多岐にわたるメディアを用いて制作を行いました。彼の作品は、地理、歴史、文化、自然、そして植民地主義がもたらす影響といったテーマを深く掘り下げています。

ラインスベルクに生まれたバウムガルテンは、ドイツの美術教育における重要な人物、ヨーゼフ・ボイスのもとで学びました。1968年にカールスルーエ国立美術アカデミー、1969年から1971年にかけてデュッセルドルフ美術アカデミーでボイスに師事した経験は、彼のその後の芸術観に大きな影響を与えたと考えられています。後に教育者としても活動し、1994年からはベルリン芸術大学で教授を務め、若い世代の育成にも貢献しました。

バウムガルテンの初期の重要なプロジェクトの一つに、1968年から1970年にかけて行われた、ヨーロッパ各地の民族誌博物館における収集品の展示方法に関する体系的な写真調査があります。この調査は、博物館がどのように歴史や文化を「構成」し、鑑賞者の認識に影響を与えるかという問いに基づいています。その成果は、スライドプロジェクション作品《Unsettled Objects》（1968–69）として発表されました。この作品では、オックスフォードのピットリバーミュージアムの収蔵品を、1874年に一般公開された当時の展示レイアウトで捉えた80枚のエクタクローム写真が用いられました。

1977年から1986年にかけてのブラジルおよびベネズエラへの長期滞在は、彼のキャリアにおける特筆すべき期間です。特に1978年から1980年にかけての1年半の間、彼はオリノコ川上流に住むヤノマミ族の人々と共に生活を送りました。当時、外部世界との接触が比較的少なかったこのコミュニティでの経験は、後の作品に大きな影響を与えています。この滞在から生まれた作品には、ブラジルとベネズエラの国境線を三次元的な図形として表現した《Terra Incognita》（1969–84）や、ブラジルの熱帯雨林とトゥピ族の創造神話に基づいた98分の映像作品で、クロード・レヴィ=ストロースの著作からインスピレーションを得た《The Origin of the Night: Amazon Cosmos》（1973–77）などがあります。また、エル・ドラード伝説で知られるラ・グラン・サバナ地域の風景写真と、採掘活動によって失われた先住民の動物名を並置した《El Dorado – Gran Sabana》（1977–85）は、開発と文化の消滅というテーマを扱っています。ヤノマミ族の森と水路を通る困難な旅を追った15枚の白黒写真シリーズ《River-Crossing, Kashorawetheri》（1978）や、17世紀のブラジルの鳥の絵、ヤノマミ族の抽象画、南米の風景写真などを組み合わせたマルチプロジェクション作品《Fragmento Brasil》（1977-2005）も、この時期の経験に基づいています。

バウムガルテンはまた、北米における先住民の歴史と地理にも強い関心を示しました。1976年と1989年には、鉄道でアメリカ大陸を横断し、複数のインディアン居留地に滞在しています。この経験は、カーネギー美術館の天井にチェロキー文字を手書きで描いたインスタレーション（1988年）や、ギャラリーの壁面にアメリカ西部の鉄道網と、そこに記された先住民の地名を重ね合わせたインスタレーション《Carbon》（1989年）といった作品に結実しました。《Carbon》は、インフラストラクチャの発展と、先住民の追放や根絶の歴史が不可分であることを示唆しています。ロサンゼルス現代美術館からの依頼で制作が始まったものの、美術館での展示は実現しなかった写真ドキュメントは、後に11の短編小説と共にアーティストブック《Carbon》として出版されました。1993年にグッゲンハイム美術館で開催された個展では、象徴的な吹き抜けの空間に北米先住民の名前が印刷されました。

彼のサイトスペシフィックなアプローチは、屋外にも向けられました。1994年には、ジャン・ヌーヴェルの設計したカルティエ現代美術館のために、意図的に雑草や野生の花を配した庭園を造園しました。《Theatrum Botanicum（植物劇場）》と名付けられたこの庭園は、中世の修道士が薬草などを保管していた場所を想起させるとともに、都市空間における自然のあり方を問い直すものでした。2002年にはニューヨーク州のデニングス・ポイント州立公園に恒久的なパブリックアート《Seven Rings for Contemplation》を制作しています。

国際的な評価も高く、バウムガルテンは数多くの重要な美術展に参加しています。1984年には、ヴェネツィア・ビエンナーレのドイツ館代表に選ばれ、《America》を発表しました。これは、会場の床にアマゾン・オリノコ川系の主要な七つの川の名前を記すというインスタレーションでした。また、ドクメンタにはV、VII、IX、Xと複数回参加し、特に1997年のドクメンタXでは、ヤノマミでの滞在に関するアーカイブを展示しました。このほか、カーネギーインターナショナルやミュンスター彫刻プロジェクトなど、国際的な主要展に招聘されています。彼の作品は、ケルンのトーマス・ザンダー・ギャラリーや、ニューヨークとパリのマリアン・グッドマン・ギャラリーで取り扱われています。

ローター・バウムガルテンは、文化、歴史、自然、地理といった複雑な要素が相互に絡み合う様相を、精緻かつ詩的な視覚言語で表現し続けました。彼の芸術は、世界を見つめる私たちの視点を問い直し、既存の境界線や定義を乗り越える思考を促すものです。

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