ロードスター (自転車)

英国発祥の実用車：ロードスター

かつて英国で広く普及し、世界中に影響を与えた自転車「ロードスター」。日本における実用車や軽快車の原型ともなったこの自転車は、1920～70年代に英国で盛んに生産されました。アメリカでは「English 3 speed」とも呼ばれ、その頑丈さとメンテナンス性の高さから、労働者階級を中心に愛用されました。現在ではヴィンテージとしてコレクターにも人気があり、その歴史と特徴を紐解きます。

歴史：労働者階級の足として

ロードスターは、現代的な量産体制で製造された初期の自転車の一つとして知られています。英国のみならず、アメリカにも輸出され、自動車が高価だった当時、庶民の重要な交通手段となりました。ラレーやBSAといった大手メーカーが大量生産を行い、多くのメーカーが参入するほど人気を博しました。

設計思想は、日々の使用に耐えうる頑丈さとメンテナンス性の高さに重点が置かれていました。スポーツ走行性能は重視されておらず、重量や効率性よりも耐久性が優先されました。しかし、1970年代の自転車ブームで、競技用自転車が主流となり、ロードスターは次第に市場から姿を消していきました。現在では、オランダやドイツの一部都市部でわずかに見られる程度です。英国のパシュレイ社など、現在でもロードスターを生産しているメーカーもありますが、英国においてはマウンテンバイクやクロスバイクが主流となっています。発展途上国では、いまだに日常的に使用されている自転車の種類でもあります。

特徴：実用性を追求した設計

フレーム

ロードスターのフレームは、安全型自転車の流れを汲むダイヤモンドフレームです。生産期間が長かったため、初期と後期では設計に違いが見られます。初期のロードスターは、重厚なスチール管とラグを用いた頑丈なフレームが特徴です。ホイールベースが長く、フォーク角とシートチューブ角が68度以下と緩やかな角度であるため、アップライトハンドルとの組み合わせで、楽な姿勢での走行が可能でした。舗装路、泥道、石畳など、あらゆる路面状況に対応できる設計となっています。後期モデルではフレームの軽量化が進み、現代のスポーツ自転車に近い設計のものも登場しました。

女性向けには、ステップスルー型のフレームを持つモデルもあり、「オールド・フェイスフル」と呼ばれていました。このタイプは、日本の女性用自転車の原型の一つとなりました。オランダでは「オーマフィーツ（おばあちゃんの自転車）」と呼ばれ親しまれています。スポーティなモデルとして「スポーツ」や「クラブ」といった種類もあり、アメリカでは関税の事情もあり、これらのモデルが多く輸入されました。

装備

ホイールは26インチまたは28インチが一般的です。実用性を重視した設計から、初期モデルにはクランク全体を覆う大型のチェーンガードや、泥除けが標準装備されていました。後期モデルでは、チェーンガードは小型化されました。ダイナモライトなどの夜間走行用装備も備えていることが多いです。

クランクは鉄製で、コッタード方式が一般的でした。変速機はシングルスピードか、スターメーアーチャーの内装3段変速機（AW-3）が使用されました。現代版ロードスターでは、シマノの内装7段変速機など、より高度な変速機が採用されることもあります。ブレーキは初期には前輪がロッド式リムブレーキ、後輪がドラムブレーキでしたが、後期モデルでは前輪後輪ともにキャリパーブレーキが採用されるようになりました。サドルはバネ付きの革サドルが多く、ブルックス・イングランド製が広く使われていました。

ロードスターは、その頑丈さと実用性から世界中で愛された自転車です。現代の自転車デザインにも大きな影響を与えたロードスターの歴史と特徴は、自転車文化を理解する上で重要な要素となっています。

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