ロード・ライアン・キング・オブ・アームズ

ロード・ライアン・キング・オブ・アームズとは

ロード・ライアン・キング・オブ・アームズ（Lord Lyon King of Arms）は、スコットランドにおける紋章を統括する最高位の官職であり、紋章院（コート・オブ・ザ・ロード・ライアン）の長を務めます。その役割は、紋章の登録、新たな紋章の認可、系図の承認、氏族長の認定など多岐にわたります。スコットランドの国務大官の中では最下位に位置しますが、その権威と重要性は揺るぎないものです。敬称は「閣下」が用いられます。

特筆すべきは、紋章院が現存する紋章を管轄する裁判所として世界最古の歴史を持つことです。これは、スコットランドにおける紋章制度の伝統と、その維持に対する強い意識を示すものと言えるでしょう。

歴史

かつてはHigh Sennachieと呼ばれていましたが、「ロード・ライアン」という名称は、スコットランドの紋章に描かれるライオンに由来します。19世紀まではライアン補佐官が置かれ、実務を担っていましたが、1866年以降は廃止されています。

職務

ロード・ライアンの職務は多岐にわたります。

国家儀式の監督: スコットランドにおける重要な国家儀式を監督します。
紋章の認可: 個人や団体からの申請に基づき、新たな紋章を認可します。
系図・紋章の使用権の承認: 系図や既存の紋章の使用権を承認します。
氏族長・クランタータンの記録: スコットランドの氏族長やクランタータンを記録します。

ロード・ライアンが管理する紋章登録簿は、1672年からの記録を保持しており、スコットランドの紋章に関する貴重な資料となっています。紋章の付与に際して支払われる手数料は、政府機関である紋章院を通じて大蔵省に納められます。

スコットランドでは、許可なく紋章を使用することは脱税とみなされ、犯罪として扱われます。紋章に関する裁判は、ロード・ライアンを唯一の裁判官とする紋章院で行われ、その判決に対する控訴は民事上級裁判所に対して行うことができます。ただし、紋章の不認可処分は行政手続きの一環であるため、控訴は認められず、司法審査のみが可能です。

イングランドとの比較

イングランドには、ロード・ライアンに相当する単一の職は存在しません。国家儀式の統括と紋章の交付という点では軍務伯が、紋章官としては3人のキング・オブ・アームズがそれぞれ役割を担っています。

ガーター・プリンシパル・キング・オブ・アームズ
クラレンスー・キング・オブ・アームズ
* ノロイ・アンド・アルスター・キング・オブ・アームズ

紋章を管轄する裁判所としては、ハイ・コート・オブ・シバリーが存在しますが、最後に開廷されたのは1954年であり、活動は限定的です。一方、スコットランドの紋章院は刑事裁判所としての機能も有しており、紋章の不正使用に対してより強い権限を行使することができます。

ロード・ライアンは、スコットランド国王旗である「ライオン・ランパント」を使用できる数少ない人物の一人です。

シンボル

ロード・ライアンの職位を示すカラー（英語版）（職章）は、1998年に新調されました。これは40個の金の環をつなぎ合わせたもので、スコットランド専用のものとしては1746年のカロデンの戦い後に行方不明になったもの以来となります。また、2003年には、スコットランド国王冠のデザインを基にしたロード・ライアンの宝冠も新調されました。エリザベス王太后の宝冠と同様、戴冠式の際にはアーチの部分を取り外せるようになっています。

ロード・ライアン・キング・オブ・アームズは、スコットランドの紋章制度を象徴する重要な存在であり、その職務はスコットランドの歴史と文化を深く反映しています。

もう一度検索