ローバー・V8エンジン

ローバーV8エンジンの歴史と進化

ローバーV8エンジンは、[自動車]]史に名を刻む名機として知られています。その起源は1961年、ゼネラルモーターズ]によって[[ビュイック215エンジンとして誕生したコンパクトで軽量なアルミ製V型8気筒ガソリンエンジンに遡ります。わずか114kgという軽量さながら、最高出力は149kW(200ps)に達し、高い出力性能を誇っていました。ビュイックはわずか3年で37万台以上の車を販売し、このエンジンの成功は明らかでした。オールズモビルやポンティアックにも搭載され、BOP(Buick/Oldsmobile/Pontiac) 215エンジンとして広く認知されました。しかし、アルミ素材の高価格やシール材の問題などから、GMは1963年にアルミ製エンジンの生産を中止しました。

その後、1964年、ローバーはアメリカ市場向けのV8エンジンの導入を検討します。ビュイックV8エンジンの軽量性と高出力性能に着目したローバーは、GMと交渉し、1965年にライセンス供与契約を締結。ビュイックのエンジニアもローバーに移籍し技術支援を行いました。

ローバーは、このエンジンを自社の車種だけでなく、モーガン、TVR、トライアンフ、ランドローバー、MGなど、多くの英国車メーカーに供給。その軽量性とパワフルさから、軽飛行機にも搭載されるなど、幅広い用途に用いられました。また、イギリスのホットロッド文化においても、ローバーV8エンジンは定番のエンジンとして長く愛されています。

ローバーV8エンジンは、改良を重ねながら、長年にわたって様々な排気量のモデルが生産されました。

3.5L

最初のローバー版は3,528cc。鉄製シリンダーライナーが圧入された鋳造ブロックや、SUキャブレターを採用した新しいインテークマニフォールドが特徴です。118kW（160ps）の最高出力を発揮し、ローバーP5、P6、レンジローバーなど数多くの車種に搭載されました。

3.9/4.0L

1990年代には3,946ccバージョンが登場し、レンジローバーをはじめ、様々なモデルに搭載されました。改良を重ね、最高出力は180psから190psへと向上しています。

4.2L

クラシックレンジローバーのLSE仕様には、4,275ccの4.2Lエンジンが搭載されました。これは、失敗に終わったアイスバーグディーゼルエンジン計画から生まれた鋳造クランクシャフトを採用しています。

4.3L

TVRはローバーV8エンジンの派生型として4,280ccの4.3Lエンジンを開発し、グリフィスやキミーラに搭載しました。

4.4L

1973年にはレイランド・オーストラリアが、レイランドP76用に4,416ccのアルミニウム製V8エンジンを開発。しかし、1975年のオーストラリア事業閉鎖により、広範囲な採用には至りませんでした。

4.5L

TVRキマイラには4,444ccの4.5Lエンジンが少量生産されました。

4.6L

ランドローバーは、1996年に4,552ccの4.6Lバージョンを発表。最高出力は225psに達し、レンジローバーやディスカバリーに搭載されました。このエンジンは2002年に生産終了。

5.0L

TVRは、最高出力340psに達する5,000ccの5.0Lエンジンをグリフィスとキミーラに搭載しました。

アイスバーグプロジェクト

1970年代後半、ブリティッシュ・レイランド(BL)は、ディーゼルエンジンの需要増大を見込み、ローバーV8エンジンをベースにしたディーゼルエンジンの開発プロジェクト「アイスバーグ」を開始しました。しかし、合金製シリンダーヘッドや冷却の問題、開発資金の不足などから、プロジェクトは中止されました。

モータースポーツでの活躍

ローバーV8エンジンは、軽量で高出力な特性から、モータースポーツでも活躍しました。1962年のインディアナポリス500に参戦したり、レプコによってF1用エンジンに改造され、ブラバムのF1チャンピオン獲得にも貢献しています。また、ラリーレースでも幅広く使用されました。

ローバーV8エンジンの終焉とその後

2005年のMGローバー倒産により、ローバーV8エンジンは40年の歴史に幕を閉じました。その後、ランドローバーはジャガーのV8エンジンに切り替えましたが、アフターマーケットでは現在も生産が続けられています。ローバーV8エンジンの歴史は、英国自動車産業の興亡と深く関わり、多くの車好きの記憶に刻まれた名機です。

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