ローラット法

ローラット法とは

ローラット法（またはローラットほう、英: Rowlatt Act）は、1919年にイギリス領インド帝国によって施行された法律です。この法令は、当時の植民地政府の治安維持を目的として制定されました。主な背景には、テロ組織による判事の暗殺や陪審員への脅迫が頻発していた状況があります。これに対処するため、法令は破壊活動が疑われる者に対して、令状なしでの逮捕や裁判なしでの投獄、陪審員なしでの裁判を認めるものでした。

正式な名称は「刑事法緊急権限法（Criminal Law Emergency Powers Act）」ですが、ローラット委員会の長であったシドニー・ローラット（Sydney Rowlatt）の名前に由来して広く「ローラット法」と呼ばれています。

法の施行と影響

ローラット法が施行されると、インドの一部地域で過激派の煽動による組織的な暴動が発生しました。特にパンジャーブ州では、法の発表を受けて抗議の動きが高まりました。情勢が混乱する中、過激派は敵国アフガニスタン王国に密使を送り、インドへの侵攻を促す動きも見られたのです。実際に、発布から数ヶ月後にはアフガニスタン王国軍がインド領内に侵入する事態が起こりました。このようにローラット法は、単なる法律改正に留まらず、インド国内の緊張関係をさらに悪化させる結果となりました。

特に1919年4月、アムリトサル市で行われた非武装の抗議集会において、パンジャーブ州の治安を維持するために派遣されたインド軍が発砲し、1000名以上の死傷者が出る惨事（アムリットサル事件）が発生しました。この事件は大きな波紋を呼び起こし、ガンディーなどの反英運動をより一層活発にしました。

法律の廃止

このような抗議運動や暴動の激化を受けて、インドの国民感情はさらに昂ぶっていきました。1922年3月、インド帝国政府は抑圧的法律委員会（Repressive Laws Committee）の勧告を受け入れ、ローラット法および1910年の出版法（Press Act）を含む22の法律を廃止する決定を下しました。この動きは、反英運動がいかに広範囲に支持されていたかを示す重要な出来事でした。

結論

ローラット法は、インドの歴史における重要な転換点となりました。法律の施行は国家への反発を引き起こし、国民動員のきっかけを作る要因となっていったのです。このように、法律そのものが持つ力と、社会情勢との密接な関係は、今もなお意義深い教訓として語り継がれています。

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