ローリングスタート

ローリングスタート：モータースポーツの独特なスタート方法

ローリングスタートとは、モータースポーツにおいて、フォーメーションラップ終了後、車両が停止することなく加速してレースが開始される方式です。インディカー・シリーズやNASCARといったアメリカのモータースポーツ、SUPER GTなどの日本のレース、そしてセルモーターのないレーシングカートなど、幅広いカテゴリーで採用されています。F1などでは、セーフティーカー走行後の再スタートもローリングスタートと呼ばれることがあります。対義語はスタンディングスタートです。

ローリングスタートの概要

ローリングスタートでは、車両は先導車（通常はセーフティカー、SUPER GTでは1周目は警察車両）に従ってコースを走行します。隊列は予選順位に基づき、原則として追い越しは禁止されます。ただし、コースアウトからの復帰など、やむを得ない場合は例外的に認められることがあります。先導車がコースを離れると、隊列の先頭車両がペースを決定し、上限と下限速度が定められているのが一般的です。隊列に乱れがあれば、エクストララップと呼ばれる追加周回を行い、隊列が整うまでこれを繰り返します。この間も追い越しは禁止され、周回数はカウントされます。レース中のローリングスタートでは、周回遅れの車両が先導車を追い越すことが認められる場合があり、NASCARの「ラッキードッグパス」などがその例です。しかし、このシステムは、チャンピオン争いに影響を与える可能性もあるため、議論を呼ぶこともあります。

ヨーロッパ方式とアメリカ方式

ローリングスタートの手順は、ヨーロッパとアメリカで異なります。これは、ヨーロッパ式のレースシグナルがアメリカのサーキットに設置されていないことが主な理由です。

ヨーロッパ方式では、各車はレコノサンスラップを経てスターティンググリッドに停止し、エンジン始動後、セーフティカーに続いてフォーメーションラップを行います。SUPER GTでは、1周目は警察車両が先導します。レースディレクターの指示に従い、セーフティカーがピットインし、シグナルが青に変わるとレース開始となります。

アメリカ方式では、各車はピットロード上に待機し、スタートコマンドの後、エンジンを始動させます。ペースカーに続いてフォーメーションラップを行い、ペースカーがピットインし、グリーンフラッグが振られるとレースが始まります。

ローリングスタートの戦術

ローリングスタートでは、先頭車両は一定範囲で速度調整が可能です。スタート直後の追い越しは禁止ですが、速度は自由です。そのため、いくつかの戦術が存在します。

例えば、スタート前に減速し、後続車が対応する隙に加速する戦術があります。しかし、これはリスクも伴います。うかつな減速はマシントラブルとみなされ、追い越しを許される可能性があります。また、減速タイミングが悪ければ追突事故につながる可能性も否定できません。さらに、この戦術は相手に見抜かれると効果がなく、逆に後続車に有利に働く可能性もあります。

もう一つの戦術は、前車との間隔を少し空けて、先に加速を開始し、スタートライン直後に追い越す方法です。しかし、間隔を開けすぎると隊列が乱れると判断され、スタートできない可能性があります。また、加速タイミングが早すぎれば、スタートライン前に前車に追いつき、減速せざるを得なくなる可能性があります。

インディスタート

ローリングスタートの中でも、隊列が密集した状態でスタートするものを「インディスタート」と呼びます。かつてDTMなどで採用されていました。

まとめ

ローリングスタートは、モータースポーツにおける高度な技術と戦術を必要とするスタート方法です。ヨーロッパとアメリカで異なる手順、そして様々な戦術が存在することで、レース展開に大きな影響を与えます。

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