ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー

音楽専門誌として世界的に知られるアメリカの『ローリング・ストーン』誌が、音楽史に名を刻む偉大な歌い手たちを100人選出した特集企画「100 Greatest Singers of All Time」。このリストは、2008年 11月27日に発行された同誌の特別号（#1066）に掲載され、発表当時から大きな注目を集めました。

選考の範囲と背景

このランキングの選考対象は、主にロックミュージックやポピュラー音楽の領域で活躍したアーティストに焦点を当てています。そのため、ジャズやクラシック、オペラといったジャンルで活躍した歌手は基本的に含まれていません。これは、「ロック世代」を中心とした同誌の読者層や編集方針を反映した結果と考えられます。特定のジャンルに限定されている点も、リストの性格を理解する上で重要な要素です。

厳選された選考委員

ランキングの決定にあたっては、総勢179名の選考委員が参加しました。委員会のメンバーは多岐にわたり、音楽ジャーナリスト、プロデューサー、レコード会社関係者といった音楽業界の専門家だけでなく、多くの著名なミュージシャン自身も名を連ねています。具体的には、アート・ガーファンクル、ブルース・スプリングスティーン、ジョージ・マイケル、ジョン・メレンキャンプ、ノラ・ジョーンズ、オノ・ヨーコ、そしてロニー・ジェイムス・ディオといった、様々なジャンルや世代のアーティストが選考に参加しました。選考方式は、各委員が自薦他薦を問わず、それぞれ20名の候補者を推薦するという形で行われたとされています。

リストを彩る偉大な歌声

選ばれた100人のシンガーは、まさにポピュラー音楽の歴史を代表する顔ぶれです。リストのトップには、ソウルの女王アレサ・フランクリンが輝き、続いてレイ・チャールズ、エルヴィス・プレスリー、サム・クック、ジョン・レノンといった、それぞれの時代やジャンルを象徴するアーティストが並びます。他にもマーヴィン・ゲイ、ボブ・ディラン、オーティス・レディング、スティーヴィー・ワンダー、ジェームス・ブラウンといったレジェンドたちが名を連ねています。ポール・マッカートニー、フレディ・マーキュリー、ボブ・マーリー、マイケル・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン、プリンスなど、幅広い世代から愛されるアーティストも多数選出されています。カート・コバーンやジェフ・バックリィといった比較的若い世代のシンガーが含まれている点も特徴と言えるでしょう。

常に議論の的となる妥当性

こうした「史上最も偉大な」といった性質のランキングは、選考委員の主観が反映されるため、その妥当性について常に議論が巻き起こる宿命を背負っています。この『ローリング・ストーン』誌のリストも例外ではありません。発表以来、選ばれたシンガーの順位や、リストから漏れたアーティストについて、音楽ファンや評論家の間で様々な意見が交わされてきました。特に発表から数年が経過した2019年には、Twitter上でこのランキングに関する話題が再燃し、「このランキングどう思う？」という問いかけに対し、2万件を超える応答が寄せられました。その中では、納得する声がある一方で、「なぜこのアーティストが低い順位なのか」「あの偉大な歌手が含まれていないのはおかしい」といった、ありとあらゆる異論や批判が噴出し、改めてこのランキングに対する関心の高さと、評価の難しさを示しました。

音楽史を振り返る視点

「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」リストは、あくまで一つの視点からの選定であり、絶対的な基準ではありません。しかし、ポピュラー音楽の豊かな歴史の中で、誰が偉大な歌声を持つアーティストとして記憶されるべきか、その影響力や表現力についてファンや評論家が改めて考えるきっかけを与えてくれる資料として、今日でも参照され、議論の対象となっています。

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