ロールス・ロイス ケストレル

ケストレル（Kestrel）

ケストレルは、ロールス・ロイスが初めて鋳造エンジンブロックを使用して開発した700馬力の航空機エンジンです。このエンジンは、同社の航空機用エンジンにおける新たな方向性を示す象徴的な存在となりました。ケストレルは、カーチスD-12エンジンの後継として設計され、多くの革新を導入しました。

初期の設計では、クランクケースにシリンダーをねじ込む方式が採用されていましたが、最終的にアルミニウム製の一体成形ブロックを機械加工によって製作する手法が選ばれました。この変更により、組み立てやすさや軽量化が実現し、製造プロセス全体がわかりやすくなりました。一方で、新しい機械加工技術には注意も必要でした。

当時のカーチスD-12は、強力なエンジンとして高い評価を受けており、記録更新に寄与しましたが、ロールス・ロイスが生産を始めたばかりのため、主にイギリスの航空機に限定された使用がされていました。

ケストレルの特長のひとつは、蒸発冷却システムの採用です。このシステムによって、通常の気圧下での水の沸点（摂氏100度）を維持しつつ、高度に応じた沸点の低下に対応しました。ケストレルは、加圧装置を配置することで沸点を150度に設定しより高い性能を確保しました。1927年に生産された最初のモデルは450馬力を発揮し、その後の改良型IB型では525馬力に達しました。そして、1935年にはXVI型が745馬力という新たな記録を打ち立てました。

ケストレルは、1935年にメッサーシュミットBf109の試作機に搭載され、様々な試験飛行に使われました。1930年代末には高オクタン価の航空燃料が普及し、ノッキング問題からも改善が見られました。1940年にはXXX型が1,050馬力を発揮するまでに至りました。

主要諸元（ケストレル V）

• - 型式: 液冷V型12気筒
• - 内径×行程: 127 mm (5 in) × 140 mm (5.5 in)
• - 排気量: 21.2リットル (1,296 in³)
• - 乾燥重量: 433 kg
• - 全長: 1,838 mm
• - 全幅: 620 mm
• - 全高: 889 mm
• - 馬力: 695 hp / 2,900 rpm

搭載機

• - イギリス:

- フォッカー D XVIII
- ブラックバーン シドニー
- ハンドレー ページ ヘイフォード
- ホーカー オーダックス
- ホーカー デモン
- ホーカー フューリー
- ホーカー ハーディ
- ホーカー ハート
- ホーカー ハインド
- ホーカー ニムロッド
- ホーカー オスプレイ

• - ドイツ:

- ハインケル He 112 試作機
- ユンカース Ju87 試作機

• - ベルギー:

- レナール R-31

• - その他:

- マイルズ マスター MK I
- Short Singapore

このように、ケストレルはその性能と技術革新によって、航空機エンジンの進化に大きく貢献しました。

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