ロールス・ロイス マーリン

マーリンエンジンについて

マーリン（英語: Merlin）は、イギリスのロールス・ロイス社が設計し製造した航空機用のレシプロエンジンです。このエンジンは、液冷V型12気筒のガソリンエンジンで、バルブ駆動方式はOHC（オーバーヘッドカム）を採用し、吸気バルブ2つと排気バルブ2つの合計4バルブからなります。

歴史と開発

1930年代の初頭、ロールス・ロイスは新しい航空エンジンの開発に着手しました。当初、成功を収めていた「ケストレル」エンジンに過給機を追加した885馬力の「ペレグリン」を開発しましたが、より強力なエンジンが求められる中で、中間クラスのエンジンとして新たに1,100馬力のPV-12を独自に開発することとなりました。このエンジンは1935年に完成し、早速ホーカー・ハートに搭載されましたが、冷却システムの変更が求められ、最終的には従来の液冷式に戻しました。

1936年にはイギリス航空省が新型戦闘機への要件を提示し、その結果、PV-12エンジンがホーカー・ハリケーンやスーパーマリン・スピットファイアに搭載されることが決まりました。この際、エンジンには「マーリン」という名前が付けられました。スピットファイアやランカスター、モスキートなど、多くの戦闘機や爆撃機に搭載され、その性能を最大限に引き出しました。

性能と特徴

マーリンエンジンは排気量を減らすことなく、効果的にスーパーチャージャーの改良を行うことで性能向上を果たしました。これにより、機体の改良が最小限で済み、大戦全期間にわたって多様な航空機に利用されることとなりました。具体的には、離陸時の出力が最大880馬力から始まり、さらに高度を上げることで出力を増加させていく特性を持っていました。

製造と利用

マーリンエンジンは、イギリスのダービー、クルー、グラスゴーにあるロールス・ロイス社の工場で生産され、その後アメリカのパッカード社がライセンス生産を行いました。パッカード社はマーリン66を製造し、P-51マスタングなどの航空機に装備しました。これにより、P-51は戦闘機としての地位を確立しました。

さらに、マーリンをベースに戦車用に改良されたミーティアエンジンも存在し、これがクロムウェルやチャレンジャー巡航戦車に搭載されました。マーリンエンジンは、軍用機だけでなく民生用にも流用され、陸上車両にも搭載されることがありました。

民生利用と保存

特に1960年代には、エンジンを使った特異な車両が登場し、一部は自作品として名を馳せました。また、エンジンが有名になった理由の一つは、1940年代から1950年代にかけて、高速モーターボートにも多く搭載されたことによります。エンジンの軽量かつ高出力の特性が評価されました。現代においても、千葉県成田市の航空科学博物館にはマーリンVエンジンが展示されており、その歴史を物語っています。

結論

マーリンエンジンは、第二次世界大戦における航空機のパフォーマンスを大きく向上させた代表的なエンジンであり、その影響は現在の航空技術にも色濃く残っています。ロールス・ロイスの革新性と技術力が生み出したこのエンジンは、航空機や戦車といった多様な分野で活用され、今後も航空機の発展に寄与し続けるでしょう。

もう一度検索