ローレンス・スターン

ローレンス・スターン: 18世紀イギリスの文豪

ローレンス・スターン（1713年11月24日 - 1768年3月18日）は、18世紀のイギリス文学において独特な位置を確保した小説家であり、牧師である。彼の代表作である『紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見』（以下『トリストラム・シャンディ』）は、その内容の奇抜さと形式的な革新により、後の文学に大きな影響を与えた。

生い立ちと初期の経歴

ローレンスは南アイルランドのティペラリー県クロンメルに生まれた。彼の家系は学問に誇りを持つ一族で、曾祖父はヨーク大主教であった。幼少期は父の連隊の移動に伴い各地を転々としたが、1722年には伯父のもとで教育を受け、1733年にはケンブリッジ大学に進学した。1737年に学士号、1740年に修士号を取得し、その後は教区牧師として働き始めた。

芸術的発展

スターンはその職業生活とは別に、大学時代に築いた友人関係を通じて多くの文学作品に触れることができた。特にフランスの滑稽文学やモンテーニュ、セルバンテスの作品が彼の作品に影響を及ぼしている。また、1759年にはヨーク地区の宗教界の闘争を風刺した小冊子を刊行し、その後に『トリストラム・シャンディ』の執筆を開始する。

『トリストラム・シャンディ』の成立

1760年1月、スターンは自費出版で『トリストラム・シャンディ』の第1巻と第2巻を発表し、瞬く間に話題を呼んだ。作品はその前衛的なスタイルと内容の自由度が評価され、彼はイギリスの文学界でも注目の人物となった。『トリストラム・シャンディ』では、主人公が登場する前にストーリーが延々と脱線していく様子が描かれ、これは一種のメタフィクション的な側面をもつとも言われている。

生涯の後半と影響

1762年以降は病気による療養のためフランスを訪れ、妻との関係が疎遠になるなど、個人生活での我慢も経験した。晩年には『センチメンタル・ジャーニー』（1768年）を発表し、こちらもまた彼の旅行体験を基にした作品として評価されている。239ページにわたるこの旅の文学は後の作家や文士に多大な影響を与えた。

評価と再評価

『トリストラム・シャンディ』は、その奇抜な構成やユーモアが特徴で、「どこが頭で尻尾かわからない作品」とも表現される。19世紀にはユーモア文学の一つとして扱われていたが、20世紀に入ってからはジェイムズ・ジョイスやマルセル・プルーストに影響を与えたとして再評価されることとなる。1968年には没後200年を記念し、「スターン200年祭」が行われた。

日本への紹介

ローレンス・スターンを最初に日本に紹介したのは夏目漱石であり、彼の作品への影響は大きかった。1897年に発表された『トリストラム、シャンデー』は、漱石自身の文体にも色濃く反映されていると考えられている。

著作の遺産

スターンの作品は、特に『トリストラム・シャンディ』と『センチメンタル・ジャーニー』が著名であり、数回の翻訳が日本語でも行われている。彼の文学的な革新は、今日の文学作品においても影響を与え続けており、彼の名は忘れ去られることはないだろう。

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