ローレンス・ブラッグ

ウィリアム・ローレンス・ブラッグ：X線回折とDNA二重らせん解明への貢献

ウィリアム・ローレンス・ブラッグ（1890年3月31日-1971年7月1日）は、オーストラリア出身のイギリス人物理学者であり、現代結晶学の父の一人として知られています。若くして類まれな才能を示し、X線回折を用いた物質構造研究で画期的な成果を挙げ、科学史に名を刻みました。

幼少期と教育

ブラッグはオーストラリアのアデレードで生まれました。幼い頃から科学と数学への強い関心を示し、その才能は周囲を驚かせました。彼の父、ヘンリー・ブラッグはアデレード大学で物理学と数学の教授を務めており、幼いローレンスは父の研究に囲まれて育ちました。5歳の時、三輪車事故で腕を骨折した際、レントゲン写真の検査を受け、オーストラリアにおけるX線の医学的応用の最初の事例となりました。これは、後に彼の研究人生に大きな影響を与える出来事となりました。

優秀な成績でアデレード大学を卒業後、一家はイングランドに移住。ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに進学し、当初は数学を専攻していましたが、後に物理学に転向。1911年には首席で卒業し、1914年にはトリニティ・カレッジのフェローシップに選出されました。

X線結晶学の研究

ブラッグの最も重要な業績は、結晶によるX線回折に関する法則、「ブラッグの法則」の発見です。この法則は、X線の回折パターンから結晶内の原子の配置を決定することを可能にしました。この発見は1912年、ケンブリッジ大学で研究生として過ごしていた時に成し遂げられました。彼はこのアイデアを父に伝え、父はリーズ大学でX線分光計を開発。これにより様々な結晶の分析が可能になり、結晶学研究は飛躍的に発展しました。この功績により、1915年、ブラッグは父と共に、当時史上最年少となる25歳でノーベル[[物理学賞]]を受賞しました。

戦時中の研究とマンチェスター時代

第一次世界大戦と第二次世界大戦中は、軍事研究にも従事。敵の兵器の位置を特定する音響測位法の研究に携わり、その貢献により、ミリタリー・クロスや大英帝国勲章オフィサーなど、多くの勲章を受章しました。

大戦の間はマンチェスター・ビクトリア大学で物理学教授を務め、その後イギリス国立物理学研究所長を歴任。第二次世界大戦後はケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所に戻り、研究所の改革を行いました。彼は小規模な研究グループが理想的だと考え、研究所をより効率的な組織へと変革しました。

タンパク質構造研究とDNA二重らせん

1940年代後半からはX線を用いたタンパク質構造研究に注目し、物理学の知識を生物学に応用する研究グループの形成に貢献しました。1953年、キャベンディッシュ研究所でフランシス・クリックとジェームズ・ワトソンがDNAの二重らせん構造を発見した際には、重要な役割を果たしました。ブラッグは、この画期的な発見を最初に学会で発表しましたが、あまり注目を集めませんでした。しかし、その後ロンドンで再発表され、広く報道されたことで、この発見は世界に知れ渡ることとなりました。

ブラッグは、彼が40年前に開発したX線回折法が、生命の根源に迫るこの発見に貢献したことを喜びました。また、彼はクリック、ワトソン、モーリス・ウィルキンスをノーベル賞に推薦し、3人は1962年にノーベル生理学・[[医学賞]]を受賞しました。

晩年と遺産

1954年から1966年まで王立研究所所長を務め、その後も科学界に多大な貢献をしました。彼は絵画、文学、園芸を趣味とし、晩年はロンドンの自宅に庭がないため、身分を隠してパートタイムの庭師として働くというユニークな一面も持っていました。1971年、81歳で逝去しました。

ブラッグの業績は、結晶学、物理学、生物学など、多くの分野に大きな影響を与えました。彼の研究は、現代科学の進歩に不可欠なものであり、彼の名は科学史に永遠に刻まれるでしょう。

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