ワイズダン

ワイズダン：芝の王者、そして伝説

ワイズダン (Wise Dan, 2007年2月20日-) は、アメリカ合衆国で生産・調教された競走馬。2010年代前半、アメリカ芝マイル路線において圧倒的な強さを誇り、『芝の神 (Titan Of The Turf)』の異名をとった名馬です。その実力は、2012年と2013年にエクリプス賞年度代表馬、最優秀古牡馬、最優秀芝牡馬の3部門を2年連続で制覇したという輝かしい実績が証明しています。本稿では、ワイズダンの競走生活における主要なレースを振り返りながら、その強さの秘密、そして伝説の一端を紐解いていきます。

華々しいデビューとBCスプリントの敗北

モートン・フィンク氏によって生産されたワイズダンは、チャールズ・ロプレスティ調教師の厩舎に入厩。兄であるサクセスフルダンも同厩舎に所属しており、ワイズダンはデビュー前に去勢されました。これは、フィンク氏がワイズダンの血統を平凡と判断し、種牡馬としての価値を見出せないと考えたためです。

2010年の3歳シーズン、ワイズダンは未勝利戦でデビュー。初戦こそ敗れましたが、続くレースでは圧勝し、才能の片鱗を覗かせます。その後も、オプショナルクレーミングを制覇するなど順調に勝ち星を重ね、グレードレース初挑戦となったフェニックスステークスでは、見事勝利を収めました。しかし、続くBCスプリントでは6着と敗退。この経験が、後にワイズダンを芝の王者へと導く転機となるのです。

芝への転向と飛躍

4歳シーズン、ダート路線で苦戦したワイズダンは、ついに芝競走に挑戦。ファイアークラッカーハンデキャップで圧勝すると、その才能が開花します。その後、オールウェザー競走であるファイエットステークス、そしてG1クラークハンデキャップを制し、グレード1競走初勝利を飾りました。兄サクセスフルダンが前年このレースで降着となった経緯もあり、ロプレスティ調教師の喜びはひとしおだったと言われています。

芝の王者としての確立

5歳シーズン、ワイズダンはベンアリステークスで圧勝し、オールウェザーでの驚異的なベイヤー指数を記録します。しかし、スティーブンフォスターハンデキャップでは惜しくも2着。この敗戦を機に、ワイズダンは芝路線に本格的に専念することとなります。

その後、フォースターデイヴハンデキャップ、ウッドバインマイルステークス、シャドウェルターフマイルステークスと次々と勝利を重ね、ついにBCマイルでも優勝。名実ともにアメリカの芝の王者に君臨しました。その圧倒的な強さは、多くの名馬を相手に、常に上位に食い込む結果で証明されました。

伝説の2年連続3部門制覇

6歳シーズンも、ワイズダンはメーカーズ46マイルステークス、ウッドフォードリザーブ・ターフクラシック、ファイヤークラッカーハンデキャップ、フォースターデイヴハンデキャップ、ウッドバインマイルステークスと、次々と勝利を積み重ねます。シャドウェルターフマイルステークスで敗れる波乱もありましたが、BCマイルでは連覇を達成。2年連続のエクリプス賞3部門制覇は、史上初の快挙でした。

惜しまれつつ引退

7歳シーズンもメーカーズ46マイルステークスとターフクラシックを制覇し、BCマイル3連覇に期待がかかりましたが、疝痛と骨折、そして屈腱炎を発症。惜しまれつつも2015年に引退しました。引退後は、ロプレスティ調教師の牧場で余生を送り、2019年に功労馬保護団体オールドフレンズに引き継がれ、2016年にはカナダ競馬殿堂入り、2020年にはアメリカ殿堂入りを果たしました。

偉大な血統と未来への継承

ワイズダンの父Wiseman's FerryはG3を2勝、母Lisa Danielleはフィンク氏の所有馬として7戦1勝の戦績を残しました。母父Wolf Powerは南アフリカの年度代表馬であり、その血統背景もワイズダンの偉大さを物語っています。ワイズダンの功績は、ファイヤークラッカーハンデキャップがワイズダンステークスと改称されたことにも表れています。

ワイズダンは、その圧倒的な強さだけでなく、その生涯を通して多くのファンを魅了しました。芝の王者として、そして伝説の競走馬として、ワイズダンの名はこれからも語り継がれていくでしょう。

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