ワイヤー・スピード

ワイヤースピードとは

ワイヤースピード（Wire speed）とは、デジタル情報通信の分野で用いられる用語で、線材を伝送路とした場合の理論上の最大データ転送速度を指します。これは通常、ビット毎秒（bit/sec）という単位で表されます。

概要

ワイヤースピードは、銅線や光ファイバーなどの導線を用いた伝送路において、理論的に算出される最大のデータ伝送速度です。この速度は、伝送路の電気的、光学的、工学的な制約だけでなく、データ転送プロトコルの最下層における制約も受けます。つまり、伝送路の物理的な特性と、データをどのように送受信するかのルールによって、その上限が決まるということです。

ネットワーク機器、例えばルーターやスイッチなどで「ワイヤースピード」という言葉が使われる場合、それは単に伝送路の速度を指すだけでなく、その機器が伝送路の速度に匹敵するほど高速に中継処理を行えることを意味します。このため、ネットワーク機器がワイヤースピードを謳うには、その処理能力が伝送路の速度と同等か、それ以上でなければなりません。

2007年頃の技術では、ネットワーク機器がワイヤースピードを実現するためには、基本的な中継機能がハードウェアによって処理される必要がありました。これは、ソフトウェア処理に比べて大幅な高速化が可能になる一方で、機器の製造コストを上昇させる要因にもなっていました。ワイヤースピードに対応したネットワーク機器であっても、入力された信号が即座に出力されるわけではなく、処理にかかる遅延時間が発生します。この遅延時間は、データ伝送全体で見るとわずかながら伝送速度を低下させる要因となります。

伝送路のワイヤースピードは、ネットワーク端末であるコンピュータのディスクアクセスやCPU処理の遅れによって制約を受けることも少なくありません。しかし、ワイヤースピードは伝送路自体の性能を測る上で、依然として重要な尺度として用いられます。

ワイヤースピードの重要性

ワイヤースピードは、ネットワークのパフォーマンスを評価する上で非常に重要な指標です。高速なネットワーク環境を構築するためには、伝送路のワイヤースピードを最大限に活かすことができるネットワーク機器の選定が不可欠です。また、実際のネットワーク環境では、伝送路だけでなく、端末側の性能も考慮に入れる必要があり、バランスの取れたシステム構築が求められます。

まとめ

ワイヤースピードは、デジタル通信における理論上の最大データ転送速度を示す重要な指標です。伝送路の物理的な制約、プロトコルの制約、ネットワーク機器の処理能力など、様々な要因によって影響を受けますが、ネットワークパフォーマンスを理解し、最適なシステムを構築するための基礎となる概念です。

参考文献

アンドリュー・S・タネンバウム; デイビッド・J・ウエザロール (2013-09-17). コンピュータネットワーク 第5版. 日経BP. ISBN 978-4-8222-8476-3.

関連項目

イーサネット

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